◆選挙そのものを楽しむ文化広げたい
「選挙芸人」という肩書から誤解されがちだが、山本さんが目指すのは特定の政党や候補を持ち上げることではなく、あくまで「選挙そのものを楽しむ文化」を広げることだという。「特に日本では、選挙が話題になるのは選挙期間中が中心。スポーツでいえば『シーズンオフ』にあたる時期にはコンテンツがないんです。’25年の参院選は久々に盛り上がりましたので、その熱を次につなげる役割を果たしたい」
では、選挙の面白さとは何か。山本さんは「選挙は人が死なない戦国時代」と表現する。戦術ひとつで強者が敗れ、弱者が躍進する。そうした勢いの移り変わりや駆け引きの妙が、選挙には詰まっているのだ。
「選挙区では、親子や親族が戦うのも珍しくありません。戦国時代も一族同士で領地を奪い合ってましたよね」
選挙の現場では謀略も飛び交うが、それもまた戦国時代的な面白さがあるという。
「陣営内での謀反や裏切りは日常茶飯事。僕が取材したとある事務所では、糞尿を投げ込まれたり、選挙事務所に長い髪の毛が巻き付けられたりしていました。怪文書をばらまかれたとき、軍師役の選挙プランナーが赤ペンで添削して『こんなにデタラメだ』と逆配布して形勢をひっくり返したこともあります。優秀な軍師がいれば戦況は一気に変わる。その感じも戦国っぽいですよね」
このような魅力を「面白く」伝えていくためには、ジャーナリストでなく「芸人」という立場が生きてくるーーと、山本さんは力を込める。
「『芸人』という立場の一番の強みは、ハードル低く物事を伝えられること。岸田首相は『増税メガネ』というあだ名がついてから一気に若者に知られるようになりましたが、政治の世界への認知はちょっとしたきっかけで広げられます。政治をネタにすることで、その『ちょっとしたきっかけ』を作りたいんです」
2025年の参院選で盛り上がった熱気も冷めやらぬまま、石破首相の退陣により次期総裁選への注目が高まっている。選挙への関心が高まる中で、笑いを入り口に選挙を語る山本さんの活動は、次の国政選挙に向けた“期日前投票”のような役割を担っているのだ。

