新大阪から名古屋へ。新幹線なら約50分の短い旅だが、隣席の乗客によっては、その時間が永遠に感じられることがある。工藤創さん(仮名)は、そんな「隣席ガチャ」に見事に外れたひとりだ。
◆駅弁を食べようと思ったら…

「名古屋まであっちゅーまやろ」
スマホで音楽を聴きながら外の景色を眺め、少し奮発して買った駅弁を手元に置き、いざ旅の醍醐味を味わうはずだった。
しかし、その小さな幸せは、隣に座った一見普通の中年男性によって、無惨にも破壊されることになる。
異変に気づいたのは、発車してしばらく経った頃だった。
◆“おじさんの靴下”と遭遇
隣の男性が靴を脱いでいた。新幹線でくつろぐために靴を脱ぐことは珍しくない。最初は前の座席についているフットレストに、おとなしく足を乗せていたのだから問題なかった。だが、時間が経つにつれて、その足の位置は徐々に、そして確実に上昇していった。気づけば、男性は前の座席の背もたれ付近に、堂々と足を投げ出していた。
「え、嘘でしょ……?」
工藤さんは心の中で叫んだ。視界の端に、見知らぬおじさんの足がチラつく。素足ではなかったものの、その靴下はなんとなく薄汚れているように見えた。
「汚なっ!」
そう思い、身体を窓際へ寄せた工藤さん。直接臭いを嗅いだわけではないが、“おじさんの靴下”という視覚情報は、脳内で勝手に「蒸れた臭い」を想像させるには十分すぎる破壊力があった。
ここからが本当の地獄だったという。

