理由①女性が起源のワイナリー
「カ・デル・ボスコ」の成り立ちの前に、まずはフランチャコルタの歴史について触れておきたい。
フランチャコルタの生産地があるのは、イタリア・ロンバルディア州。1961年、グイド・ベルルッキ社の醸造家フランコ・ジリアーニがシャルドネ主体で瓶内2次発酵スパークリングワイン「ピノ・ディ・フランチャコルタ」を生産したことから、その名が知られるようになった。
1967年には、シャンパーニュと同じく原産地呼称に認定(イタリアではDOC、フランスではAOCと呼ぶ)。95年には、イタリアの瓶内2次発酵ワインで初となる最高格付けDOCG(統制保証原産地呼称)に認定され、現代ではイタリアを代表する最高級スパークリングワインとなった。わずか数十年で最高級DOCGに昇格したことは「フランチャコルタの奇跡」として知られている。
カ・デル・ボスコの歴史は、ちょうどフランチャコルタの評価が高まってきた1960年代後半から始まる。64年にオーナーのマウリッツィオ・ザネッラ氏の母親がこの地に夏の別荘を購入したことがきっかけだった。栗の木の森が近くにあることから「森の家(カ・デル・ボスコ)」と呼ばれたこの別荘の名前が、ワイナリーの名にも引き継がれた。
68年、わずか14歳にしてマウリッツィオ氏はこの地のポテンシャルを見抜いて、ぶどうの苗を植樹。自身もブルゴーニュでワインの醸造に欠かせないたる造りの技術を学び、本格的に情熱を注ぎ始めた。79年に、フランスのシャンパーニュ地方を訪れた際に出会ったモエ・エ・シャンドンの醸造家を招聘(しょうへい)したことで、瓶内2次発酵を採用し、20年でイタリアのトップワイナリーに。母親の先見の明が、息子たちの未来を築き、息子の母親への愛情が異例の速さで品質の高いフランチャコルタを生み出すことにつながったのだ。

ちなみに、ドロミテ山系の氷河によって地形が形成されたことから、フランチャコルタは岩が多くやせた土地だったため、農地には向いていなかった。しかし、このやせた、肥沃(ひよく)ではない土地こそワイン作りには最適な土壌。11世紀には、この地に残ったのはベネディクト派の修道僧ばかりで、ぶどうを栽培し、儀式でも欠かせないワイン作りを行っていたのだ。フランチャコルタという土地の名前は、あまりにも土地が貧しく作物が取れないため、修道僧たちが役所に免税を願い出たことから、ラテン語で「税金がかからない場所」と名付けられたのが由来である。当時、数世紀のちには、世界の華やかなシーンでその名を語られるようになるとは、誰が想像しただろうか。
理由②シルクのような味わい

カ・デル・ボスコのフランチャコルタの味わいの魅力は、クリーミーな泡と、純粋で上品な果実味があり、シャンパーニュよりも酸味は穏やかであることだ。この味わいこそフランチャコルタ特有の“サテン”と呼ばれるカテゴリーのもので、サテン(絹)の呼び名の通り、非常にきめ細やかな泡が喉を通るなめらかな感覚は一度味わうとくせになる。喉ごしがよいということは、のんでいるときの仕草が美しく見える。
この味わいが生まれるのは、カ・デル・ボスコ方式といわれる徹底した品質管理と高い醸造技術力による。とくに、手摘みしたぶどうを洗浄して乾燥させることにこだわりがある。熟練の目と手によって一房ずつ選ばれたぶどうは、「ベリー スパ」と呼ばれる独自のシステムを通るのだ。これは、ぶどう房専用の特別な渦流式洗浄装置で、3つの浸漬タンクを経て丁寧に洗浄された後、専用トンネルでしっかり乾燥される仕組み。ぶどうに付着したほこりや土などの不純物が除去されるので、果実本来のピュアな味わいとアロマが保たれることになる。

さらに、酸素を遮断したプレス機で搾汁されたすべてのベースワインのマストは、温度管理されたステンレスタンクで発酵され、7か月かけて熟成される。その後、「魔法の儀式」と呼ばれる慎重なブレンド作業へ。続けて、ワインは最低2年間をかけて澱(おり)の上で熟成され、畑本来の豊かさと個性を完全に表現するように成長する。スパークリングワイン作りで必須である、デゴルジュマン(澱抜き)は、酸素を遮断した環境で行われ、カ・デル・ボスコ独自の特許取得済みプロセスにより実施される。この工程により酸化ショックが防がれ、亜硫酸塩の添加が抑えられるため、カ・デル・ボスコのフランチャコルタはより純粋で魅力的、かつ長寿命なワインに仕上がるのだ。
これらの工程を経て誕生した最新作が「キュヴェ プレステージ エディツィオーネ 47」だ。2020年、21年、22年のヴィンテージがブレンドされていて、しっかりとした骨格を持ち、心地よいフレッシュな酸味が感じられる。果実味が豊かで、優れたシトラスのニュアンスを伴った仕上がりは、イタリア料理はもちろん繊細な和食にも完璧なパートナーになってくれる。
