◆1本5000円の「超振動水」をぶっかける女
Aさんとの一件で心身ともに疲弊した佐藤さんだったが、職場の同僚(男性)が「その子は例外中の例外。僕なら、もっと地に足のついた女性を紹介できるよ」と合コンを設定してくれた。そこで出会ったのが、Bさん(30代後半)。大手外資系金融機関に勤める、いわゆるバリキャリ女子だ。論理的で知的。会話のテンポも良く、佐藤さんは「今度こそ、話の通じる相手だ」と確信した。しかし……。
「彼女とディナーに行ったとき、違和感がありました。Bさんは、お店が出してくれる水に一切手をつけず、カバンから自前のペットボトルを取り出して飲むんです。意識高い系の硬水かな? と思って聞いてみると、またあの『当たり前』のようなトーンで返ってきました」
「これ? 超振動水だけど?」
Bさんが持ち歩いているのは、1本5000円もするという謎の飲料水。彼女の説明によると、その水は、一度圧縮した後に除圧することで、一時的に超振動が起こっている状態なのだという。さらに、水は記憶物質であり、この反応によって素粒水という、あらゆる毒素を浄化する物質に変化しているのだとか。
「Bさんは真顔で『この水を飲めば細胞レベルで老廃物が除去されるし、食べ物にかければ農薬が消えるんだよ』と説明してくれました。そして、運ばれてきた僕のメインディッシュの肉料理にも、霧吹きでその水をシュッシュと吹きかけ始めたんです。消毒されている気分でした」
彼女の生活はすべて波動水を中心に回っていた。手を洗うのも、うがいをするのも、その水だった。
「さすがに耐えられなくなって、『悪いけど、その水の理論は僕には理解できないし、ついていけない』と正直に告げました。すると彼女は冷めた目で僕を見て『波動が合わないんだから、しょうがないよね』と一言だけ言いました。それで終わりです」
紹介してくれた同僚に事の顛末を話すと、「えっ、あの子、そんなキャラだったっけ!?」と、腰を抜かさんばかりに驚いていたという。
◆「誠実さ」が怪物を呼び寄せるのか?
なぜ、佐藤さんの周りにはこうも極端な女性たちが集まってしまうのか。取材の最後に、彼は自省を込めてこう分析した。「多分、僕が聞き上手すぎるんだと思います。理系出身で、まずは相手の主張を最後まで聞いてから考えようとする癖があります。それが、自分の信じていることを全力で肯定してほしいスピリチュアル女子たちにとって、自分たちの歪んだ世界観を経済的にも精神的にも支えてくれる存在に見えてしまうのかもしれません」
条件だけ見れば優良物件のはずの彼だが、その隙のない経歴と誠実さが、スピリチュアル女子たちを引き寄せてしまうようだ。
「普通の感覚を持った女性と、普通に水道水を飲める生活を送りたい」
彼の切実すぎる願いが叶う日は、果たして来るのだろうか。
<取材・文/橋本岬>
【橋本 岬】
IT企業の広報兼フリーライター。元レースクイーン。よく書くテーマはキャリアや女性の働き方など。好きなお酒はレモンサワーです

