実子と配偶者で食い違う「実家」への価値観
実家は、実子にとっては親から託された「愛情の象徴」であっても、配偶者から見れば「築古の不動産」です。
幸恵さんが言うように、手元に残る現金が少ない状態で引き受ければ、家計全体のキャッシュフローを圧迫する可能性が高いでしょう。さらに、実際に住むとなれば、老朽化によるトラブルへの対応や日々の管理といった負担が、同居する配偶者にも長期的にのしかかります。
感情を優先する実子と、生活の維持を最優先する配偶者……この「家」への価値観の違いは、しばしば相続人のあいだで激しい反発を生みます。
法的には、「相続人の配偶者」は相続人には含まれず、遺産分割協議に参加する権限もありません。しかし、家計を共にする存在である以上、その存在や影響力を無視することはできないでしょう。
“築古実家”を相続する前に…講じておきたい3つの対策
古い実家を相続する場合には、以下のような対策が欠かせません。
1.修繕・維持コストの「可視化」
屋根や水回り、外壁などといった主要部分について、10年単位でどれくらいの支出が見込まれるのかを試算し、数字で把握します。客観的なデータがあれば、感情に流されず冷静で建設的な話し合いが可能です。
2.「長男が住む」という選択肢を唯一の正解としない
誰かが「住み続ける」以外にも、リノベーションして賃貸に出す、一定期間後に売却して現金化することなど、不動産を相続したあとの選択肢は意外にも多くあります。
実家を「資産」のひとつとして柔軟に考える姿勢が、配偶者の不安を和らげるためにも重要なポイントです。
3.配偶者を意思決定のプロセスから排除しない
家族会議に相続人の配偶者もはじめから参加してもらう、あるいは事前に意見を聞いておくなど、配偶者の意向を尊重する姿勢が大切です。配偶者も実際の生活に直結する当事者ですから、配慮ある姿勢が結果としてトラブルの予防につながります。
実家をどう扱うかは、家族の価値観や生活事情がぶつかりやすいテーマです。
互いの事情をきちんと共有し、現実的な落としどころを探る姿勢こそが、結果的に亡くなった親・残された家族の双方を守ることにつながるでしょう。
山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー
