水野美紀さんインタビュー「ずっと茨の道を歩いているかもしれません」~舞台『死神』が問いかける、50代で向き合う「生きる覚悟」

水野美紀さんインタビュー「ずっと茨の道を歩いているかもしれません」~舞台『死神』が問いかける、50代で向き合う「生きる覚悟」

2026年4月に開幕する舞台『死神』。古典落語をベースにした作品で、「死神」を演じる水野美紀さんに、現在の心境や近況を伺いました。

ちょっと皮肉でおもしろい。女性が死神を演じること

20264月に開幕する、水野美紀さん出演の舞台作『死神』は、古典落語『死神』を、劇作家・演出家の倉持裕さんが磨き上げたチャレンジングな作品です。落語版との大きな違いは、まず、死神が女性として描かれること。死神に扮する水野さんは「最初は女性なんだと驚きました」と笑います。でも、その違和感こそが、今作のおもしろさだと感じたそう。

「命を生み出す女性が死神、というのは、ちょっと皮肉な感じもしますし、劇中でも死神が女性としての悩みを語る場面があったりしておもしろいんです。ただ、私自身は、年齢を重ねるほど、性別を超えていく感覚があって。おじさんとおばさんって、だんだん近くなっていきますよね?(笑) 私自身50代を迎えて、いろいろな経験をしてきたことで、男でも女でもない存在として、死神役を演じられる。その距離感がいまはしっくりきています」

江戸時代の話ですが、登場人物たちの造形や抱える悩みは普遍的。たとえば、主人公の八五郎(牧島輝)は、妻がいるのに家にお金を入れないダメ夫。

「本当にダメな男ですよね(笑)。お金もないし、働かないし、すぐ『死にたい』と言う。でも、どこか憎めないところもあって。牧島さんが演じることで、そのダメさと可愛げがバランスよく現れて、魅力的になるんじゃないかな、と思っています。その八五郎の奥さん(樋口日奈)の存在もすごく効いていて。夫婦が、赤ん坊さえできればいまの膠着状態から抜け出せる、と願う気持ちは、観る人によっては、ゾッとするくらいリアルに感じるんじゃないかな」

落語の「死神」は、最後のオチの部分「サゲ」が噺家によって違ったりしますが、今回のサゲがどうなるのかも必見です。

ずっと茨の道を歩いているかもしれません

主人公・八五郎は、「死にたい」と口にしながらも、実は生き方に迷っている人物です。水野さんご自身は、生き方に迷っていた時期はあるのでしょうか?

「ずっと迷っているというか、茨の道を歩いているイメージです。20代の頃は、仕事しかしていなくて、自分の人生というより、役の人生を生きている感覚が強かったですね。現実社会に適応できるスキルが磨けているのかというとそんなこともなくて……。根なし草みたいだなと思っていました」

そこから何か変わったきっかけはあったのでしょうか。

40代での出産は、大きな転機でした。社会との接点が一気に増えて、自分がどれだけ特殊な世界で生きてきたかを実感しました。それでもこの世界(芸能界)で生きていくしかないと覚悟が決まり、次の世代になにを残せるかを考えるようになりました」

10代でデビューし、多くの映画、ドラマで主役を演じ、30代を前に演劇ユニット「プロペラ犬」を旗揚げ、そして40代での出産を経て、最近は俳優業のみならず、バラエティ番組での活躍も目立ちます。常に新しいチャレンジをしている水野さんに、その原動力を尋ねると、意外な答えが返ってきました。

「実は私、ネガティブだし、臆病なんですよ。不安から逃れるために、たくさん動くし、勉強もしようと思うのかもしれません。いまの時代、なんの不安もなく毎日過ごしている人なんていないんじゃないかな……」

ベテランの域にいる水野さんでさえ、悩みもあれば、焦燥感もある。そんな等身大の言葉に、私たちも少し勇気をもらえます。

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