「本国に帰ったら殺される」ナイジェリア人女性の難民認定を求める訴訟が開始

「本国に帰ったら殺される」ナイジェリア人女性の難民認定を求める訴訟が開始

3月13日、ナイジェリア人女性のオブエザ・エリザベス・アルオリウォさんの難民不認定処分の取り消しを求める訴訟が提起された(東京地裁)。

日本在住中に独立運動に参加、「後発的難民」に

エリザベスさんはナイジェリアで広く実践されている女性器切除(FGM)の強制から逃れるため、1991年頃にいちど来日した後に出国し、1995年に別人名義で再度来日。

非正規滞在となっていたが、2006年に東京入管に出頭して入管法違反の事実を申告し、同年12月に収容された。2011年1月に退去強制令書が発布されたが、同年10月に仮放免。2016年10月に再収容されたが、2017年8月に再び仮放免となった。

エリザベスさんの出身地であるビアフラという地域(ナイジェリア南東部)は、1967年に国家として独立を宣言し、1970年まで「ビアフラ戦争」という内戦の舞台となっていた。戦後も独立運動は続き、特に今世紀に入ってからは「ビアフラ分離主義運動」が盛んになっている。

このビアフラ分離主義運動の中核を担うのがイギリスで創設されたIPOB(Indigenous People of Biafra、ビアフラ先住民)と呼ばれる団体であり、同団体は日本(IPOBジャパン)を含む世界各地に展開されている。

そして2015年9月、IPOBの政治指導者であるンナムディ・カヌ氏が来日した際に行った講演を聴いたエリザベスさんは、感銘を受けて独立運動に参加するようになり、現在はIPOBジャパンの中心的な活動家の一人となっている。

しかしナイジェリア政府は国内においてIPOBのメンバーや支持者を多数殺傷しており、前述のカヌ氏も現在は投獄され終身刑に服役させられている。このことから、「エリザベスさんはもしナイジェリアに帰国すれば、政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有しており、典型的な『難民』(政治難民)にあたる」と原告側は主張する。

2017年5月、エリザベスさんは「IPOBの代表的なメンバーであること」などを理由に難民申請をしたが、2025年10月、入管は不認定処分とした。本訴訟は、この処分の取り消しを求めるもの。

なお、エリザベスさんは以前にも難民申請をしており、今回は2回目の申請。ただし、前回の難民申請の理由は、前述した女性器切除に関するものだった。

また、今回の申請理由はエリザベスさんがナイジェリアを出国した当時には存在せず、来日して国内で活動を始めるようになってから発生したものである。しかし、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、出身国における出来事や出国後の本人の行動が理由で、出身国を離れた後から、後発的に難民になる場合もある、としている。

「後発的難民も難民であることは国際的な常識であり、これは難民不認定の理由にはなりません」(原告側の資料より)

「ゼロプラン」による強制送還のリスク

2回目の難民申請が不認定となった後、エリザベスさんは、不服申立ての手続きである審査請求を行っており、この手続きはまだ続いている。原告側代理人の駒井知会弁護士によると、審査請求の結果次第では難民として認定される可能性がまだ残っているため、通例であれば、このタイミングで不認定処分取り消し訴訟が提起されることはないという。

しかし、2025年から入管が実施している「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」により、難民申請に関する手続きの途中または直後に難民申請者が強制送還されるケースが複数発生しているという。

また、エリザベスさんは仮放免者や入管に収容されている外国人をサポートする活動を日本国内で行ってきた。2021年に名古屋入管に収容中に死亡した、スリランカ国籍の女性であるウィシュマ・サンダマリさん(いわゆる「ウィシュマさん死亡事件」の被害者)からも相談を受けていたという。

これらの活動のため、原告側は、入管がエリザベスさんのことを快く思っておらず、強制送還されるリスクが高い状態にあることを危惧している。また、原告側代理人は「入管による難民認定手続きはそもそも信用できず、裁判所に判断を仰いだ方がよい」と考えているという。これらの理由から、通例よりも早く訴訟を提起したという経緯だ。

「手続きが終わってしまうと、いつ強制送還されるかは、入管の胸先三寸。ゼロプラン後の政治難民をどう守るか、ということも、この訴訟の中で主張していきたい」(駒井弁護士)

提訴後に開かれた記者会見で、エリザベスさんは、自身が日本に約30年住んできたことや、仮放免者などへの人道的な支援活動を行ってきたことを訴えた。

エリザベスさん(3月13日都内/弁護士JPニュース編集部)

「現在、自分は実質的にIPOBジャパンのリーダーとなっている。そんな自分がナイジェリアに帰ったら、殺されてしまう。私の人生は日本で終わらざるを得ない」(エリザベスさん)

なお、イギリスやカナダなどでは、IPOBのメンバーが難民と認定されたケースがすでに複数存在しているという。

配信元: 弁護士JP

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