NHKが12日、受信料を滞納した福岡県と北海道のホテル運営会社2社に対し、滞納金等の支払いを求める民事訴訟を提起した。滞納額は福岡県の会社が約1370万円(6年5か月分)、北海道の会社が約850万円(8年8か月分)。NHKによれば、事業所に対する民事訴訟提起は7年ぶりである。
NHKは今後、一般世帯に対する督促に加え、事業所に対する督促も強化する方針であるという。
長期間にわたり受信料を滞納している企業は2024年度末時点で約2万社に及んでいるという。また、昨年から今年にかけて、全国の自治体で、テレビの受信機能があるカーナビを搭載した公用車での受信料未払いも次々と発覚している。
こういったことが起こる背景には、事業所について一般世帯と異なる料金体系が敷かれていることや、事業所の高額な受信料の負担が重くなっている可能性も考えられる。事業所の受信料体系は、一般世帯と比べてどのような違いがあるのか。
一般世帯の受信契約
まず、一般世帯の場合の受信契約についておさらいしておこう。受信契約は基本的に「世帯」ごとに結ぶことになっている。「世帯」とは以下のいずれかをさす。
- 「住居」と「生計」をともにする人の集まり
- 独立して「住居」もしくは「生計」を維持する単身者
このように、「住居」「生計」が判断基準となっている。
したがって、たとえば、Aさん一家(生計が1つ)が暮らす家(住居が1つ)に2台以上のテレビ等がある場合は、1世帯で1つの契約を結べばよいということになる。なお、テレビチューナー付きカーナビ、携帯電話のワンセグ・フルセグ等がある場合も、それらをすべて含め1世帯1契約で足りる。
他方で、住居が複数ある場合には、住居ごとに受信契約を結ぶ必要がある。また、単身赴任者や親元から離れて生活する学生は独立した住居を維持しているので、受信契約を結ばなければならない。ただし、学生の受信料免除、家族割引の制度がある。
店、会社等の「事業所」の場合
これに対し、事業所の場合は、設置場所ごとに受信契約が必要である。
たとえば、会社で社長室、会議室、各部署の部屋に1台ずつ設置され、社用車すべてにテレビチューナー付きカーナビが内蔵されている場合、それぞれについて受信契約を結ばなければならない。
今回、NHKが提訴したホテルや旅館等の場合も、客室ごとに1台ずつ設置されていれば、それぞれにつき1契約を結ばなければならない。社用車にカーナビがあればそれも1台ずつ契約締結が必要ということになる。
NHKが提訴した2社をみると、福岡の会社は6年5か月で約1370万円(1か月あたり約17. 8万円)、札幌の会社は8年8か月で約850万円(1か月あたり約8.2万円)であり、一般世帯と比べ、その負担は著しく大きい。
2契約目から受信料が半額になる「事業所割引」等も
ただし、事業者の場合、一定の要件をみたせば「事業所割引」の適用を受けられる。
事業所割引は、事業所等「世帯」以外で、①同じ敷地内に設置したテレビ等について、②必要な受信契約を複数締結し、③一括して受信料を支払う場合に、2契約目以降の受信料の半額が割引となるものである。事業所割引を受けるには、契約者から申し出る必要がある。
また、衛星契約については「多数一括割引」も受けられる。
多数一括割引は、合計10件以上の契約を締結していれば、契約1件につき月300円が割引となる。同一敷地内で10件以上の契約がなされれば、自動的に適用される。これに対し、別々の施設等で通算して合計10件以上の契約がある場合には契約者からの申し出が必要となる。
事業所割引と多数一括割引とは、併用が可能である。
このように、事業者向けの契約体系は、一般世帯のそれと大きく異なっている。とはいえ、NHKのホームページでは契約体系や各種割引について分かりやすく説明されている。そうであるにもかかわらず、なぜ、一般企業や地方自治体で受信料の未納が相次ぐのか。
単なるミスなのか、それとも、受信料の負担が不相当に重くできる限り免れたいと考える担当者が多いのか。NHKの受信料制度への賛否の問題とは別に、気になるところではある。

