今週のテーマは「5度目のデートまで、何もなかったら諦めるべき?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:弁護士と4回デート、それでも進展ゼロ…「この関係、意味ある?」と悩んだ夜
「真由ちゃん、僕たち付き合わない?真剣に将来を見据えて」
今日で、真由に会うのは5度目だったが、彼女に交際を申し込んだのには、理由がある。
真由は、IT系の営業をしている29歳で、最初は「感じのいい子だな」程度の印象だった。
彼女のことを意識し始めたのは、2回目のデートの帰り道だった。そして、話せば話すほど、この人のことをもっと深く知りたいと思うようになっていった。
自然体で、媚びも計算もない彼女にとても興味を持った。僕は、法律事務所の弁護士として働いているが、33年間生きてきて、こういう感覚は初めてかもしれない。
― この子、いいな。
そう思ったのには、いくつか理由があった。
僕は弁護士という職業柄、人の「言葉」にとても敏感だ。証言の矛盾を見抜くのが仕事ということもあり、日常会話の中でも、無意識に相手の言葉を精査してしまう癖がある。
これは恋愛においても同じで、これまで付き合った女性たちに対しても、どこかで「本当のことを言っているか?」という視点が抜けない。それが原因で、長続きしないこともあった。
でも、真由は違った。
真由と最初に出会ったのは、大学の同級生からの紹介だった。「僕らと同じ大学の後輩の子なんだけど、すごくいい子がいて。慶に紹介したい」と言うことで、『apéro. wine bar aoyama』で、初めて真由に会った。
ネイビーのジャケットに白のスカートで現れた真由は、清楚さの中に品が漂っていた。最初は、お互いぎこちなかったけれど、真由が僕の方をじっと見つめて、こんなことを言ってきた。
「あの…何か、運動されていたんですか?めちゃくちゃ体格良いですよね」
実は社会人になってから太ってしまったので、ここ数年ジムへ積極的に通い、体作りを頑張っていた。それを褒めてもらえた気がして、思わず笑顔になる。
「え?わかりますか?最近、運動頑張っていて」
「そうなんですね」
そこから、この日は仕事の話をしたり、お互いに少しずつ知っていく…という感じだった。
「IT系の営業って、何をするんですか?」
「色々とあるんですけど…」
そしてこの翌日。僕は早速、彼女を食事へ誘うことにした。
― 慶:昨日はありがとうございました。良かったらまたご飯でも。
すぐに日程も決まり、初めて二人でのご飯は、神楽坂の鉄板焼き屋さんにした。もちろんこのデートも楽しくて、すぐに3度目のデートを迎えることになる。
しかしこのデートで、僕は色々と気がついた。それは、仕事の話や、将来の話をしている時のことだった。
「じゃあ慶さんは、いつか独立されるんですか?」
僕が所属している法律事務所は、名も通っているし規模も大きい。過去の女性たちは、事務所の名前を聞くと目を輝かせる人も多かった。それに加えて、弁護士の年収をなぜか世の婚活女性たちはよく知っている。事務所名や年齢などをネットでサーチすれば、大体の金額が出るからだろう。
「うん。やっぱりいつかは自分の事務所を作りたくて」
しかし、真由は僕の想像とはまったく違う反応を示した。
「すごいですね!応援します」
目をキラキラと輝かせながら、僕に対して屈託のない笑顔を向けてきた真由。この反応が新鮮であり、同時に、彼女からまったく“計算”が見えてこなかった。
「ありがとう。そう言ってもらえると、心強いよ」
― 彼女には、虚栄心とかがなさそうだな。
それが、僕が最初に出した結論だった。
この仕事をしていると、「弁護士という職業」に惹かれる女性と、「僕自身を好き」という女性を、何となく見分けられるようになってきた。
真由は、明らかに後者だった。
3回目のデートの終盤、お酒も入って結構盛り上がった僕たち。しかしそんな状況でも、真由はちゃんと僕に対して一線を引いている。
「じゃあ、僕はここで。真由ちゃん、本当に電車で帰るの?気をつけて帰ってね」
「は、はい…」
僕の家は代官山だと伝えていたが、真由から「家に行っていいですか?」とか、距離をグイッと詰めるようなことはしてこない。
それにタクシーではなく、ちゃんと電車で帰ろうとしている真由を見て、「金銭感覚がしっかりしているんだな」と思った。
これも、よくいる他の女性たちと違って、とても凛として美しく見えた。
また4度目のデートでは、2軒目にワインバーへ行くことにした僕たち。
「このワイン、美味しいですね」
優雅にワイングラスを回す真由が美しく、思わず見惚れてしまった。
「真由ちゃん、赤ワイン派だもんね」
「そうなんです。慶さんも、ですよね?」
「そうそう」
「お家でも飲むんですか?」
「いや、一人では飲まないかな。家に誰か来たりしたら飲むけど」
「へ〜そうなんだ。慶さんのことだから、オシャレなお家なんでしょうね」
「いや、めっちゃシンプルだよ。物がほとんどないし」
こう言って、僕は一瞬「しまった」と思った。
家の話をすると、大概の女性は「え〜お家に行きたい♡」とか言うからだ。(そしてその目的が、大体どういう所に住んでいるのか、家賃の査定調査だということも知っている…)
しかし真由は、まったく興味がなさそうに話を続けている。
「そうなんだ」
この対応に、僕は驚くと同時に、とても「信頼ができるな」と思った。僕のことを職業ありきで見ていないし、何より真由のこの真面目な感じがとてもいい。
「真由ちゃんは?お家はどんな感じなの?」
「私はお恥ずかしながら実家なので…」
「麹町だっけ?」
「そうなんです。そろそろひとり暮らしをしないと、とは思っているんですが」
ご実家に住んでいるから、余裕があるのだろうか。
いや、違う気がする。真由はきっと、育ちも良いのだろう。それも信頼できるし、何よりもガツガツしておらず、ゆとりを感じられる。
そして気になっていたことを、思い切って聞いてみた。
「大事に育てられたんだろうな、というのが伝わってくるよ。真由ちゃんは、どんな相手となら結婚できそうなの?」
すると少しだけ考えながら、真由は真摯に答えてくれた。
「嘘をつかない人と、対等でいられる関係、ですかね。あと、一緒にいて楽な人」
「楽、というのは?」
「背伸びしなくていい感じ、とでもいうか。自分が自分でいられる、みたいな」
「なるほど。わかるような、わからないような…」
「どちらかが無理をする関係は嫌だなと思います」
その答えに、自然と笑みが浮かぶ。
これまでの恋愛で、「結婚どう思う?」と聞いてくる女性はたくさんいた。でもほとんどは、「いつしてくれるの?」という意味の変形だったように思う。
でも彼女の言葉には、焦りがない。ただ、自分の中にある答えをそのまま教えてくれた感じがする。
そしてこの4回目のデートの後、僕は考えた。
― 今ここで動かなければ、後悔するかもしれない。
弁護士という職業は、決断が遅いと機を逃す世界でもある。恋愛もおそらく、同じだ。
33歳になって、それなりに女性と関わってきた。でも「この人と一緒にいると、ありのままでいられる」と思ったのは、真由が初めてだった。
だから5回目のデートの帰り道、僕は意を決し自分から伝えた。
「真由ちゃん、僕たち付き合わない?真剣に将来を見据えて」
真由はしばらく黙った後、「はい…」と答えてくれた。
何度かデートを重ねて、じっくりと精査した結果ちゃんと付き合いたいと思った。
男性は、大事にしたい人とは、ゆっくりと関係を育みたいから関係進展を急がない。
だから、時間をじっくりかけて関係を築いている場合、相手を大切にしたいと思っている証だと思う。
▶【Q】はこちら:弁護士と4回デート、それでも進展ゼロ…「この関係、意味ある?」と悩んだ夜
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
▶NEXT:3月21日 土曜更新予定
デートの割り勘問題

