◆当初は「なんで加害者支援なんか…」と思った
加害者家族の口から発せられたと思えない、罵倒の言葉。当然許せない気持ちになったそうだが、草刈さんの胸には、とある想いが芽生えていた。「あとになって、加害者家族も大変なんだろうなと……。どちらの立場も作ってはいけないんだなと思ったんです」
草刈さんの想いに呼応するかのように、運命の輪が回り始めたのが、東日本大地震のボランティアだった。活動の中で知り合った、お好み焼きチェーン「千房」の創業者・中井政嗣さんから、“職親プロジェクト”という更生支援に誘われたのだ。
「ただ、『なんで被害者遺族の自分が加害者支援なんかせなあかんねん』と、断ろうと思っていました。でも実は中井さんは、私が被害者家族だと知らずに声をかけてくれていたんです。不思議な流れに必然性を感じて、気づいたら引き受けていました」
◆何度も裏切られたすえ、気づいたことが
職親プロジェクトは、出所後に住む場所や仕事を提供する仕組みである。「仕事を与えたら勝手に更生するかなと思っていました」と考えていた草刈さんだったが、現実は甘くなかった。「何度も裏切られました。たとえば更生して10年目に性加害を行ってしまった子がいて。彼の身請け引受人になった時、被害者に対して申し訳ない気持ちがあふれました。受刑者の多くは、親からDVを受けていたり、教育が与えられていなかったりと、社会的被害者の側面を持っています。彼らとの関係性を深めるほど、自分はどれだけ恵まれていたかに気づいたんです。
一時期、妹を殺した犯人を「本気で殺せないか?」と思ったこともありました。でも、自分には守るものがあるから思い留まって。この人を裏切ってはいけない、悲しませてはいけないなど、そうした気持ちが再犯の抑止力になる。プライドは人が持たせてくれるものだと思っていたのですが、仕事を与えるだけでは無理やなと」
少年犯罪を犯す子どもたちは、ブレーキの掛け方がわからないだけと、草刈さんはいう。
「ある日支援した子から、『今から殴り込みにいくねん』と電話がかかってきたんです。その子は親がいなかったので、『守るもん俺にしてくれやって言ったよな。今から傷害事件起こされたら、俺悲しいやんと』と話すと、『だから電話しました。やめます』と、踏みとどまってくれた。『電話してきてくれて、ありがとう』と伝えましたが、少しでもブレーキの部分を担えたのかなと嬉しかったですね」

