貯めたお金を使えないまま逝く、という可能性
兄の遺産をそれぞれ引き継いだ両親。相続税などを差し引いても、まだ1億円以上残ります。ともに76歳、年金の慎ましい暮らしでしたが、高級老人ホームに入れるほどのお金を手にいれました。しかし、複雑な想いを口にします。
「まさか親より先に死ぬなんて。あの子が我慢して貯めたお金だと思うと、どんな気持ちで使っていいのかわかりません」
A子さんもまた複雑でした。両親の介護費用などの不安は消え、両親が兄の資産を使い切らなければ、いずれ自分のところに回ってくるかもしれません。
「ありがたい話ではあるけれど……。それよりも、節約ばかりしてきた兄は幸せだったのかな。そればかり考えてしまいます」
A子さんが直面した出来事は、現代の老後資金の難しさを象徴しています。節約して資産を積み上げることは、決して間違いではありません。老後に自助努力を求められる今、先のことを考えて、つい目の前の楽しみを我慢してしまう……そんな人も少なくないでしょう。
しかし、使わずに貯めるだけ。それで終わる可能性もある。もしものときのことを考えれば、「貯める努力」と「使う勇気」のバランスこそが大切なのかもしれません。
