「FPに聞きたいお金のこと」今回は30代女性から火災保険についての相談です。
乾燥しがちな冬は、火災のニュースを目にする機会も増えます。ご自宅の火災保険は十分でしょうか?特に賃貸住宅に住んでいる場合、火災保険の補償範囲などを深く確認しないまま加入・更新している人も多い印象があります。今回は賃貸住宅における火災保険の注意点について確認していきます。
30代女性Fさんの相談内容
最近、家の近くで火事があったことをきっかけに、火災保険について考えるようになりました。わが家は賃貸で、入居時から火災保険の内容を特に何も見直さず更新してきましたが、実際に火事を目の当たりにすると、どこまで補償されていれば安心できるのかが気になりました。
もし自分の家が火元となり、他の家や駐車場の車などにも延焼したらその補償はどうなるのか、家に住めなくなったらどこまで火災保険で補償されるのかなど不安です。あわせて、火災保険に付けておいた方が良い特約や、将来家を購入した場合はどの部分を見直したら良いのか知りたいです。
隣家や周辺への責任は?
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Fさんが一番気になっているのは「自分の家が火元となり、他の家などに延焼した場合の補償」かと思います。まず、この点について整理していきます。
延焼して他人に損害を与えた場合は、民法709条が適用されます。
民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
条文には「損害を賠償する責任」があるとされているため、火事の場合も責任が問われそうですが、実は民法とは別に「失火責任法」という1条だけの短い法律があり、そこには「失火による火災で他人の権利を害する行為は、重大な過失を除き、民法709条の定める不法行為には該当しない」と定めがあります。
ここまでを整理すると以下のようになります。
・重大な過失の場合:民法に基づき、賠償責任が生じる
・重大な過失でない場合:原則として、隣家などへの賠償責任は生じない
民法では「故意または過失」とされていますが、失火責任法では「重過失」という表現が使われており、どういう状況であれば責任が生じるのか?という線引きは非常に難しいところです。
過去の判例を見ると、仏壇のろうそくが火元となったケースでは、通常、ろうそくは燭台の上で自然に燃え尽きるものと考えられるため、特別な事情がない限り「重過失」とはみなされないようです。もちろんそれぞれ状況次第で判断は変わる点には注意が必要です。
一方、寝たばこが原因の場合は明らかに「重過失」とみなされるというのが一般的な見解のようです。このあたりが一つの目安になりそうです。
このように、日常生活において火事が起きないようにしっかりと注意を払っていれば、法律上、隣家や周辺への賠償責任が生じることはなさそうです。
ただし、大家さんへの賠償はまた別です。賃貸住宅では通常、借主に「原状回復義務」があります。火事での被害に限らず、退去する際は破損させた壁などを入居時の状況に戻さなければなりません。したがって火事によって一定の損害が生じた場合、大家さんへの賠償責任が生じます。