
近年、嫁姑の関係に変化が生じています。かつては“絶大な権力”を誇っていた姑が、むしろ最近では「嫁に嫌われないよう気をつかって暮らす」というケースも少なくないようです。さらに、こうした関係性に「お金の話」が絡むと、問題はより複雑化してしまいます。現代の“嫁姑問題”とその対策を、事例をもとにみていきましょう。
“嫁の顔色”をうかがう姑
「お義母さん、リンのピアノの月謝、立て替えをお願いできませんか?」
嫁のミサさん(仮名・38歳)は屈託のない笑顔で、義母のヨウコさん(仮名・68歳)に告げます。
リンとは9歳になるミサさんの娘で、ヨウコさんの孫です。
「もちろんよ」とヨウコさんは、さも明るく返事をしますが、内心では「またか」とため息をついています。“立て替え”を頼まれたのは、今月だけでもう3度目です。
ヨウコさんの息子(40歳)がミサさんと結婚したのは10年前。表面的には仲の良い嫁姑にみえるでしょう。今まで、大きな嫁姑問題に発展したことはありません。
しかし、それは姑のヨウコさんの気遣いあってのこと。ヨウコさんの心中は決して穏やかではありませんでした。
なぜなら、ここ数年、ことあるごとに、ミサさんにお金の無心をされるからです。建前上は「立て替え」ですが、これまでに貸したお金が返ってきたことは数えるほどしかありません。
お金を用立てるようになったきっかけは、5年前に息子夫婦が近所に家を建てたときに遡ります。ヨウコさんは、「新築祝い」と称して息子夫婦に100万円を渡しました。
そのお金の出所は、ヨウコさんの亡くなった夫が残してくれた生命保険金の一部です。いうまでもなくヨウコさんの老後を支える大切な資金だったのですが、「一生に一度のことだし」「これでミサさんと上手くやっていけるのなら……」と、いわば“先々への投資”の意味合いがあったといいます。
しかし、これがよくなかったのかもしれません。ミサさんに“都合のいいお財布”と、勘違いされてしまったようでした。
その後、要求は徐々にエスカレートしていきます。
孫の習い事の月謝、家族旅行の費用や外食費など、ことあるごとに笑顔で“立て替え”を要求するミサさん。
ヨウコさんの資産は夫が遺してくれた家と預貯金約1,000万円のみ。普段は月約12万円の年金で暮らしており、金銭的な余裕はありません。一方、息子夫婦の懐事情は知りませんが、少なくとも家計が逼迫しているようには見えませんでした。
ヨウコさんはそのころ、「またいつお金をせびられるのか……考えただけで恐ろしい」と、ミサさんに怯えながら生活していたといいます。
ついに迎えた「我慢の限界」
これまで、波風を立てたくない一心で我慢を重ねてきたヨウコさん。しかし、あることをきっかけに“我慢の堤防”が決壊してしまいました。
それはヨウコさんが「10年乗った車を買い替えるつもり」という話をミサさんにしたときのことです。
すると、ミサさんはこう言いました。
「お義母さん、車なんて中古で十分でしょう。それよりも、リンの夏期講習費用30万円、立て替えていただけませんか?」
ヨウコさんはミサさんの返答に、思わず「それよりもって、あなた何様!? だいたい、なんでわたしがそこまで我慢しなきゃいけないのよ!」と、自分でも驚くほど強い口調で返したそうです。
ついに姑の反撃はじまる
優しくなんでも受け入れてくれていた義母の“思わぬ反撃”に、言葉を失うミサさん。
スイッチが入ったヨウコさんは、これまで我慢してきた思いと今後の対応について、毅然と伝えます。
「ミサさん。私ね、これまでの立替分を全部記録してあるの。いくらだと思う? 320万円よ、320万円。この立替分は贈与じゃなくて貸付金なんだから。一度にとは言わないけれど、必ず返してくださいね」
すると、ミサさんの表情が一変しました。そしてこう言います。「そんな、他人行儀なこと、私たち家族じゃないですか」
ヨウコさん「でもね、私にもこの先の生活があるのよ。これから立て替える分は、すべて借用書を書いてもらいます」
ヨウコさんは続けて、次のことをミサさんに伝えました。
■「借りているだけ」と主張しても、借用書などの法的証拠がないと贈与とみなされることがある。その場合、受け取ったミサさんに贈与税の負担が生じるかもしれないこと
■もし、これまでの立替金を返済しないのなら、生前贈与をしたものと考えて相続の配分を考え直す。つまり、息子への相続財産から立替分を差し引くことにすること。
ミサさんは内心、ヨウコさん亡き後の相続についても期待していたようで、明らかにショックを受けた様子でした。
そして、ヨウコさんは最後にキッパリ。
「援助はあくまで余力だからできるの。このままじゃ自分の生活が不安だから、金銭的な援助は今後一切できません」
これを聞いたミサさん、最後は泣き落としにかかりますが、ヨウコさんの心が動くことはありませんでした。
