「あの人」が語る日本ワインの未来
パネルディスカッション終了後には、各地のワインを試飲できる交流会を開催。生産者や関係者に、日本ワインの未来について直接話を聞いてみた。

日本ソムリエ協会名誉会長
田崎真也氏
「ワイナリーが増えているのにブドウの供給量が足りないことや、6割ものワイナリーが赤字経営になっている現状など、日本ワインの課題を議論し、広く伝えられたのは本当に有意義でした。ワインは農産物なので、まずはワイナリーよりもブドウ畑を作ることから始めるべきで、そこからようやくテロワールを表現できるワインが生まれます。日本でもフランスのAOCのような細やかな原産地呼称の仕組みを整えることが急務だと考えています。これからもワイナリーや関係者の皆さんと一緒に、日本ワインの未来を描いていこうと、心新たにした一日でした」

「ドメーヌ・タカヒコ」(北海道)
醸造家 曽我貴彦氏
「日本ワインは価格面で安価な輸入ワインと対抗するのは難しいので、プロのソムリエがいるレストランで提供して、その個性や魅力、作り手の思いを伝えていくことが、日本ワインが生き残る一つの『近道』だと考えています。今は輸出にも力を入れていますが、世界のレストランで評価されれば、日本でもその価値が注目されます。さらに、甲州のような固有品種はもちろん、国際品種でも『日本らしさ』や『その土地らしさ』をしっかり表現すれば、小さな生産者でも十分に勝負できると思っています」

「安心院葡萄酒工房」(大分県)
工房長 古屋浩二氏
「ブドウ品種については、大分の温暖なテロワールを映し出すアルバリーニョが進化を続けていて、畑ごとの個性も表現できるようになってきました。県と一緒に新しい品種の交配にも取り組んでいて、健全なブドウを栽培することはもちろん、品種の特性やその土地の特徴をしっかり表現して伝えることが、飲み手の皆さんにとって『日本ワインならではの魅力』として届くと信じています」

「シャトー酒折」(山梨県)
醸造責任者 井島正義氏
「農作物であるブドウは、温暖化の影響を受けていることが今日のディスカッションでも示されました。私たちは、「気候変動に合わせたワインのスタイル」を模索できるのではないかと考えています。もちろん栽培家の腕が試される部分ですが、日本の栽培技術は世界的にも高く、うちのワイナリーでは優秀な栽培家とともに科学的な知見も活用しながら、変化する時代に向き合っていきたいと思っています」

「朝日町ワイン」(山形県)
栽培醸造係長 鈴木俊哉氏
「私たちも農家さんからブドウを買ってワインを造っており、ブドウの供給の不安定さは常に実感しています。そうした現状を踏まえながら、各地のワイナリーの取り組みを聞き、ファンを作ることは大事だと改めて感じました。小さい産地だからこそ団結力が強いのが山形の強みなので、いいワイン造りを続けながら山形の魅力を伝えていきたいですね」

株式会社 横浜君嶋屋
代表取締役社長 君嶋哲至氏
「日本ワインは「高い」と言われることもありますが、飲みやすくて料理に合わせやすい懐の深さがあるので、1本で通せると考えれば非常に満足感が高いと思います。その魅力を体験してもらうためには、やはりレストランで提供することが重要だと感じています。流通や販売の立場としては、料理との相性はもちろん、産地や造り手の思いもきちんと伝えて、日本ワインを選ぶ飲み手をもっと増やしていきたいですね」
text by Asako NAKATSUMI
photographs by Shoichi NOSE

