
減り続ける老後資金に不安を募らせる年金暮らし。そんな中、「自分も資産を増やしたい」とNISAで投資を始めた佐々木さんでしたが、資産減少とは違う「思わぬ弊害」が待ち受けていました。それはいったい何だったのか……見ていきましょう。
年金月14万円では足りない…投資に夢を託した68歳男性
「こんなはずじゃなかった……」
通帳を見て溜息をついた佐々木隆一さん(仮名・68歳)。長く勤めたメーカーの下請け企業を定年退職し、年金生活を始めて3年になります。佐々木さんは一人暮らし。受け取っている年金は月12万8,000円ほどです。ところが、実際の生活費はそれを上回っていました。
「家賃が8万円。そこに光熱費や食費、通信費なんかを入れると、最低月16~17万円くらいになる。病院代、家の更新費、慶弔費、ちょっとした旅行などで、そこでおさまることはほとんどありません」
65歳時には退職金と貯蓄を合わせて約1,500万円を確保していました。しかし、資産の減少は想像以上。このままのペースで取り崩して、果たして足りるのか――。
そんなとき、テレビやネットで目にするようになったのがNISAの話題でした。「これからは“貯金より投資”の時代」「非課税で資産形成」「シニアでもチャレンジ」――そんな言葉を聞くうちに、佐々木さんは考えるようになりました。
「少しでも増えるなら自分もやってみよう」
こうしてNISA口座を開設。自分の年齢だと少額すぎても効果は限定的。投資の極意は「できるだけ早く、多くの資金を投入して相場にさらすこと」という話を聞きかじり、大人気だという米国株インデックスファンド(投資信託)を300万円分購入しました。
ところが、ここから佐々木さんの生活は一変したのです。
スマホから目を離せない日々
佐々木さんは、毎日何度もスマホで基準価額を見るようになります。更新は1回だけなので、何度もチェックしても意味はない。そう分かっていても、見ずにいられないのです。
「昨日より下がってる……」
そんな日があると、一日中気分が落ち込みます。逆に数千円上がっただけで、安心する。そんな日々の繰り返し。下落が続くと「NISAなんて勧めるなよ」と、ストレスでスマホを床に投げつけることすらあったといいます。
半年ほど保有した結果、米国株ファンドは触れ込み通り、上下はありつつも少しずつ増えています。しかし、お金の悩みを軽くしたいと始めた投資によって、以前よりもずっとお金のことで頭がいっぱいでした。
佐々木さんは「毎日スマホばっかり見ている。これが“良い老後の過ごし方”といえるのか?」……そう気づいたのです。
