M-1王者や、関西のお笑いを背負う重鎮たち。その中に、場違いとも思える局アナが立っていた。進行役として笑いを“整える”側のはずの彼女は、芸人たちと同じ土俵に足を踏み入れた。修行ライブを打てば即完する、“ボケる局アナ”にボケない信念を聞いた。

◆クビ覚悟でボケる局アナ
「すべてを捨てていい。クビになってもいいと思っていました」。大喜利や即興力で芸人たちが火花を散らす人気番組(※1)『千原ジュニアの座王』。本来は進行役に徹するはずのアシスタントが、突如手を挙げた。スタジオの空気は一瞬凍りつく。だが次の瞬間、想像以上の切れ味で場をさらい、大爆笑を巻き起こした。普段は報道番組や特番で安定感のある進行を見せる局アナが、あえて“一線を越えた”理由はなにか。(※2)第1回「関西アナウンス大賞」特別賞部門大賞を受賞するなど、今注目を集める関西テレビの竹上萌奈アナウンサーに、その覚悟を聞いた──。
――番組収録中、千原ジュニア氏の一言が大きな分岐点になったそうですね。
竹上:はい、「この芸人嫌やなと思ったことはある?」と聞かれて、何げなく「特にないですね……」と答えたんです。東京での収録だったんですが、ビジネスホテルに戻ってからハッとなった。「あれは大喜利のフリだったんだ」と。「私、こんなつまらない人間じゃない」と思って、悔しさで涙してしまいました。そこで火がついたのかもしれません。
◆「機会を見てボケよう」心に決めていた
――今ならなんと返しますか?竹上:今でしたら……、「楽屋でずっと政治の話をしている方ですかね」と返すかもしれません。まあ、(※3)ほんこんさんのことなんですけど(笑)。実際のほんこんさんはすごく良い方なんですよ。廊下ですれ違うと「おお! 頑張れよ」と声をかけてくださいます。
――悔しさで涙した後、悩んでいた期間がありましたか。
竹上:中途半端な状態を続けるくらいなら「機会を見てボケよう」と心に決めていました。アナウンサーが芸人さんの番組で出しゃばるようなことをして、どう思われてもしょうがないと腹をくくったんです。正直に言うと「私もやっていいですか?」と手を挙げた時は、「すべてを捨てていい」「もうクビになってもいい」という覚悟でした。

竹上:あの回答には、実は私自身の羨ましさも入っているんですね。私は一生働くぜ、というような羨望も含まれているんです(笑)。そもそも、なぜこういう回答が思いつくかという話になりますが、私はフリーであれ局員であれ、どこの地域の方であれ、一生懸命仕事をしている人たちは本当にリスペクトすべき仲間だと思っています。だからこそ、そういう人たちが報われる世の中であってほしいとの願望が根底にあるんです。放送後、一番怖かったのは視聴者の方からの反応よりも、周りのアナウンサーからの反応でした。「余計なことを言うな」とお叱りを受けると思っていると、人づてに聞く意見も含めて意外にも「よく言ってくれた」という賛同の声ばかりでした。その時、「あ、間違ってなかったんだ」とすごくホッとしました。
――3年前の(※4)noteで「女子アナ辞めましょ」と書かれています。笑いに昇華させるのは難しかったのではないでしょうか。
竹上:随分と減ってきましたが、いまだに「女子アナ」とカテゴライズされて言われることについて、もしかしたら私たちの態度や甘んじている部分も良くないのではないか、という自戒もあります。もちろん、現状に満足している人もいますし、誰かを責めるつもりは一切ありませんが、世間一般の人もそう思っている部分があるからこそ、番組では「局アナである私が言ったら笑いになるのでは?」と踏み込んでみました。

