「美しい」を見つめ直すためのヒントを探った、&Premium143号(2025年11月号)「美しい、ということ」より、スタイリスト・近田まりこさんの暮らしに寄り添う"美しいもの"を特別に紹介します。



近田まりこさんにとって「美しいもの」とは。

〝美しいもの〞というお題をもらったときにまず思ったのが、最近は詩のようなものに格別な美しさを覚えるということでした。詩は言葉を使いながら、言葉では出来上がっていない世界の様相を映し出します。同じように、ものにも言葉ではないけれど、ロゴスや物語性を宿す美しさがたくさんあります。けれど、それも超えて、感覚が広がったり、世界や宇宙に触れたり、説明できない何かを感じたりするものもある。人が作った音や香り、形や手触り、舌触りのなかにも、詩はひそんでいます。ここで取り上げた3点もそう。耳かきがケースに入っているときのカラカラという音、数字の持つ美を説明できそうなツボ押しの形、手のひらサイズの石の中に、世界や宇宙がすっぽりと入っているような感覚、そして、一方向に流れるだけではない時間を内包しているような波動。それらは詩の世界観と通じ、捉えどころはないものの、確実に存在してる美の気配を感じ取ることができます。
近田まりこスタイリスト
1980年代から’90年代にかけて雑誌『オリーブ』の人気スタイリストとして活躍。雑誌やCMなどでスタイリングを行い、独特の世界観をつくり出している。
photo : Satoshi Yamaguchi edit & text : Wakako Miyake

BEAUTIFUL THINGS / 美しい、ということ。&Premium No. 143
洗練された大人が選ぶのは、心がときめく「美しいもの」や「美しいこと」、そして自分らしい美しい生き方ではないでしょうか。いまの時代、効率や成果が大切にされる一方で、夕陽の輝きに見とれたり、花のひらく姿に心を澄ませるといった感覚が、少しだけ後回しにされているようにも感じます。けれど「美しい」と感じる心こそが、私たちの日々を本当に豊かにしてくれるのだとは思います。この一冊では、住まい、装いや日用品などのもの選び、ふるまいや言葉、そして生き方にいたるまで、Better Life の礎となる「美しい」を見つめ直すためのヒントを探ってみたいと思います。
andpremium.jp/book/premium-no-143

