米国は日本より労働時間が長い?アメリカ人の労働時間と残業代は

「アメリカ人は残業せず、時間になったらさっさと退社する」というイメージがあるでしょうか。しかし統計データを調べると、アメリカ人の方が「労働時間が長い」という矛盾するリアルが見えてきます。アメリカ人は日本人のように残業をよくするのでしょうか?するとしたら残業代はいくらでしょう?今回は、日本ではあまり知られていないアメリカの労働時間について、統計データを基に深掘りします。

アメリカ人の労働時間は日本人より長い?

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筆者は2000年初頭にアメリカに移住後、出版やIT業界などでの勤務を通して周囲のアメリカ人の働きぶりを目にし、「意外とよく働くな」「割り切って効率的に働いている」と感心したことがあります。

オフィスワーカーの彼らには、長時間勤務を美徳とする雰囲気はまったくありません。勤務中はダラダラせず集中してパソコンに向かい、5分前から片付けを始め、時間になるとさっと一斉に退社します。残業をする人はほとんど見たことがありません。

ただしこれはあくまで筆者の周囲にいる人の印象であり、労働時間や働き方は職種や雇用形態によって大きく異なります。

またアメリカ人の働き方の特徴として、一般的にヨーロッパに比べてバケーションが少ない傾向にあるのも、よく言われることです。例えば、8月にフランスなどを訪れると休業中の個人経営店をよく見かけるでしょう。アメリカでも長期休暇を取る人はもちろんいますが、休暇の取り方は人それぞれで、職場や仕事の内容次第と言えます。

法定労働時間や関連する細かな内容は国によって異なります。日本は厚生労働省所管の労働基準法により、原則として1日8時間、1週間40時間が上限です。これを超える場合の時間外労働(残業)についても、法律で上限が定められています。

アメリカは日本以上に格差が大きく、労働時間に関してもそうだと言えます。アメリカ人の労働時間は長い短いと一緒くたに語ることができません。

ただし、米労働省(United States Department of Labor=DOL)所管の公正労働基準法(Fair Labor Standards Act=FLSA)により、連邦法上の労働基準が定められており、法定労働時間の上限は日本と同じ週40時間です。1日単位の時間規制は設けられていません(パイロットやトラック運転手など職種や州によって例外あり。時間外労働については後述)。

実際には、医療などのエッセンシャルワーカー、法律・金融業界、起業家といった職種では、労働時間が長く休暇が少ない傾向があります。低賃金労働者や複数の仕事を掛け持ちしている人も十分な休暇を取りにくいのが実情です。一方で、大企業に勤めるホワイトカラー層の中には、3~4週間以上の長期休暇を取得する人がいるのも事実です。

これらは統計的にも概ね正しく、経済協力開発機構(OECD)の最新データ(2023年)を見れば、アメリカの年間平均労働時間(年間労働時間の合計を平均就業人数で割った数値)は日本やヨーロッパなど多くの主要先進国より長い傾向にあることが確認できます。

この統計を基にした年間労働時間に関しては、コロンビアがもっとも多くて約2200時間、アメリカが約1800時間、日本、オーストラリア、カナダ、スペインは1600時間前後、フランス、イギリス、スイスなどは1500時間前後という水準が示されています(年により変動あり)。

この数値をベースに語れば、アメリカは日本やヨーロッパ諸国より労働時間が長い傾向があると言うことができます。しかし実際のところは「人によって異なる」のが実情でしょう。例えば日本には「サービス残業」がありますが、サービス残業の時間は統計には含まれないことがあります。ちなみに筆者はかつて日本のメディアで働いたことがあり、かなりの長時間労働でした(90年代の話ですが)。

アメリカにはサービス残業という概念はありません。また労働時間は職種、時代、州によっても異なります。勤務時間や残業代のポリシーについては、就業前に交わす契約書の内容をきちんと把握しておくことが大切です。

アメリカの平均労働時間は

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前述の統計による数値をベースにするならば、アメリカの年間労働時間、約1800時間は週5日勤務の場合、1日6.9時間労働に匹敵します。この数値はほかの統計からも整合性があると言えます。

別の統計もあります。統計・市場データのプラットフォーム、Statista(スタティスタ)は労働統計局(Bureau of Labor Statistics)のデータ*を基に「アメリカの全従業員の週の平均労働時間(2022年8月~25年8月の間で、月毎に集計したもの)」を発表しました(25年11月28日付)。

これによると23年1月がもっとも多くて34.6時間、つまり週5日で割ると1日6.92時間。25年1月がもっとも少なくて34.1時間、1日6.82時間。22年の週平均労働時間も約34.5時間で、これらの数を基に考えても、近年のアメリカ人の1日の労働時間は、週5日勤務の場合「およそ7時間弱」と言うことができるでしょう。

*ただしデータの対象労働者は、以下の条件付きです。
毎年の季節変動(例:1月は雇用が減り、夏季は建設業が、12月は小売業が繁忙期など)を数理的に補正したデータ、かつ民間の非農業部門における給与所得者を対象とし、パートタイム労働者も含んでいます。ただし政府職員、収穫期など季節や天候に影響を受ける農業従事者、自営業者は含まれていません。

フルタイムワーカー(正規雇用労働者)に限定すると数値は少し高くなり、平均週40~42時間前後になります。

これらの数値はあくまでも目安として考えた方が良いでしょう。前述の通り、実際の平均週労働時間は業種によって大きく異なります。23年4月時点で、鉱業および林業の従業員の労働時間は週約45.5時間、民間教育および医療サービスの従業員は週平均33.4時間でした。

米労働統計局(Bureau of Labor Statistics)による、25歳以上の労働者を対象とした24年のデータ「就労者が就業日に費やす平均時間(曜日別)」では、別の角度からの数値が見えてきます。これによると、平日の平均労働時間は7.95時間、週末は5.51時間と、平日の方が長いのです。

フルタイムかパートタイムか、シングルジョブ(一つの仕事)かマルチ(副業を持つか*)か、学歴などによっても異なります。例えばパートタイムワーカーであれば平日の平均労働時間は5.34時間、週末は5.39時間と、先ほどの統計データの数値より時間が短いです。

*日本と大きく異なる点の一つにアメリカは仕事の掛け持ちがしやすいということがあり、本業に加え副業を持つ公務員さえいます(雇用契約によって異なる)。

配信元: mymo

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