HAA 池田佳乃子さん──東京を手放さずに考える、これからの移住

HAA 池田佳乃子さん──東京を手放さずに考える、これからの移住

ライフスタイルブランド「HAA(ハー)」の代表であり、大分県別府市と東京の二拠点生活を8年続けてきた池田佳乃子さんは、その流れを身をもって感じてきた一人である。ただし彼女は、東京を完全に手放すことはしなかった。別府の余白と東京の混沌。その両方を行き来するなかで見えてきた、自分自身のリズムの整え方と、移住という選択のこれからについて聞いた。

移住が「特別」ではなくなった今

池田さんが別府と東京の二拠点生活を始めたのは2018年。当時はまだ「二拠点生活」という言葉自体がそこまで浸透していなかったという。別府出身の池田さんが東京の大学を卒業後、広告代理店などで働いたのち、地域に関わる仕事がしたいと考えたことが出発点だった。建築家である夫の後押しもあり、まずは実家のある別府に半分住んでみることからスタートした。

「結婚しているのになんで別府に行くの、と聞かれることがほとんどでした。単身赴任ですかって、9割以上の方に言われましたね。自分の意思でそういうライフスタイルを選んでいるとは捉えてもらえなかった」

それが今は、二拠点生活をしていると話しても「いいね、そういうライフスタイルなんだね」という反応が返ってくるようになった。その変化はコロナ禍以降、東京だけでなく、地方の人たちの間でも感じるという。

「『単身赴任なの?』とも聞かれなくなりましたね。二拠点生活っていうものが、コロナ禍を経て市民権を得てきたのかなと。リモートワークが当たり前になったことがやっぱり大きいですよね」

「軽やかな移住」への共感と、少しの引っかかり

ライフステージの変化を待たずに、「今住みたいから住む」という感覚で移住する人が増えている。池田さん自身、フルリモートの会社を運営し、社員がそれぞれ住みたい場所で暮らすことを大切にしている。趣味のバイクに合わせて熊本に住んでいたが、温泉好きが高じて最近別府に移住したメンバーもいるという。住む場所を自分で選べる環境を作ること自体に関心があると話す。

「どこに住みたいか、どういうライフスタイルを送りたいかは、自分が主導権を握るべきだと思っていて。会社と個人のライフスタイルが寄り添ってあるべきなんじゃないかなって」

一方で、軽やかさだけでは見えにくいものがあるとも感じている。二拠点生活や移住の面白さは、街を「定点観察」できるところにあると池田さんは言う。

「東京だと街は常に変化していて、それが普通。でも別府みたいな場所だと、変化がゆっくりなんですよね。お店が閉まって、翌年やっと次のお店が入って、再開するんだなとか。100円で入れる温泉で毎朝話すおばあちゃんがいるとか。そういう‟街が生きている”ような動きのなかに自分も入っていく感覚があって、それを感じられるのに多分3年ぐらいかかるんです」

「行きたいから行く」という軽やかさには共感しながらも、そこに少しでも目的や土地との接点があるといいのではないか。旅行で何度も通ううちに、お店の大将が「おかえり」と言ってくれるような関係性ができて、そこから暮らしが始まっていく。そういう入り口が理想的だと池田さんは考えている。

配信元: Harumari TOKYO

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