【連載】文房具百年 #72「小さいものを眺めていたら~昔のアルバムとコーナーラベル~」

【連載】文房具百年 #72「小さいものを眺めていたら~昔のアルバムとコーナーラベル~」

タイトルや説明、装飾を書く


 写真にタイトルをつける際に、直接書く場合もあり、以前は黒い台紙に書くための白いインクや鉛筆が存在した。現在も黒い紙に書くための白い筆記具はあるが、実はアルバム用として古くからあり、アルバムの台紙が黒や茶色ではなく、白やクリーム色になってからは、一旦使われなくなったものである。実際、当時の白インクや白鉛筆を見ても「修正用」や「色鉛筆の白」と思う人が多いだろう。

202603taimichi18.jpg*アルバムに白インキで描かれた説明。とても丁寧に作られている。アルバムの時期は昭和10年頃。



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202603taimichi20.jpg*国産インキ最初期のメーカー、ライトインキで有名な篠崎インキの「チャムピオン 白インキ」。骨董市で入手したが写真関連用品と一緒にあったもの。なお、調べるとアルバム用のインキとして「金・銀・白インク」を扱っている店もあるので、金や銀のインクを使うこともあったのであろう。


 次にアルバム用の鉛筆を紹介しよう。これは実際にアルバムで使用されているのを見つけられなかったのだが、商品名が「アルバム鉛筆」なので、黒など濃い色合いの台紙に書き込むためのものであることは間違いない。

202603taimichi21.jpg*三菱鉛筆の「アルバム鉛筆」。これは推定昭和30~40年頃のものだが、昭和12年頃には発売されていた。



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 今回紹介する文房具は以上だ。並べてみると、写真を残すために専用のラベルや筆記具類があり、それなりの需要があったようだということに、当時の写真の重要性が想像できる。現代は、SNSで簡単に連絡ができ、オンラインで顔を合わせることもできれば、直接会うにしても移動は高速で安全な手段がいくつもある。そのどれもがなかった時代においては、誰かと会ったり、何かしたことの記録である写真はとても大切だったであろうし、それをアルバムに一枚ずつ丁寧に貼り、タイトルやメモを書いていく作業自体も、大切な時間であったであろう。
 便利な現代に文句があるわけではないが、写真やアルバムがとても大切だった時代や、そのために存在した素敵な文房具があった時代がちょっとうらやましく感じる部分もある。

202603taimichi24.jpg*コーナーラベル、タイトルラベル共に裏面に水糊が塗られており、経年劣化で丸まったりくっついたりする。

今回使用したアルバムについて


 今回、昔のアルバムの作り方について紹介するに際し、手持ちのコーナーラベルやタイトルラベル、白インキが本当に当時のアルバムで使用されているのかわからず、実際に使用されているアルバムを探し、2冊入手した。どちらもいいアルバムだが、特に1冊は、アルバムの表紙から自作の絵が描かれており、最初から最後まで丁寧にイラスト付きで説明が付されている、作った人の思いが感じられる素敵なアルバムだ。アルバムの紹介用として保有するのは申し訳ない気もしたが、せっかく出会えたアルバムなので、色々な方に見てもらいつつ、資料として大切に保管させていただこうと思う。

202603taimichi25.jpg*昭和10年頃のアルバム。布の表紙に持ち主が絵を描いている。



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※1黒田久吉氏:元は絵葉書を販売しており、後にアルバムやフォトコーナーラベルを扱うメーカー「ペンドリ株式会社」の創業者である。
※2「東京紙製品のあゆみ」: 東京紙製品卸商業協同組合刊、1982年


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配信元: 文具のとびら

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