バレンシアガでピエールパオロ・ピッチョーリがルネサンスの巨匠たちの技法に挑戦
3月7日(土)午後8時、ピエールパオロ・ピッチョーリはバレンシアガでの2回目のコレクションを発表した。同デザイナーは、大胆な演出を通して、このメゾンに与えようとしている新たな方向性を示した。
2025年10月4日に披露された、ピエールパオロ・ピッチョーリによるバレンシアガ初のコレクションには、明確な目的があった。それは、ブランド創業者クリストバル・バレンシアガ氏独自の制作手法を称えることだ。彼の想像力から生まれた、厳格でいて活気に満ちた54のルックは、その目的を達成するのに役立った。この移り変わりの激しいラグジュアリー業界では、次々とショーが繰り広げられる。2026-2027年秋冬シーズンの幕開けにあたり、新たな物語を紡ぐ必要があった。そしてその物語性を作り上げるのに、ドラマシリーズの監督ほど適任な人物がいるだろうか?
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パリ発のブランド創業者の遺産を受け継ぎながら、ピエールパオロ・ピッチョーリは映画監督サム・レヴィンソンとのコラボレーションを実現させ、バレンシアガを新たな領域へと導いた。
ルネサンス絵画の明暗法とサム・レヴィンソンによる舞台演出
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前回のショーが開催されたパリ7区のラエンネック病院(17世紀に建てられた旧病院施設)の木製のフローリングに別れを告げ、舞台はシャンゼリゼ通りへ。パリで最も有名な大通りの喧騒(けんそう)は、ショーが行われた静かで実験的な雰囲気の会場では完全に遮断されていた。会場は闇に包まれ、数台の巨大スクリーンの光だけが空間を照らしていた。光と影の演出は、サム・レヴィンソンが脚本を手がけたドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』のストーリーに呼応するかのようだ。同作は、重度のドラッグ中毒から抜け出そうとする10代の女性ルー(ゼンデイヤが演じている)を追った物語である。ジュールという女性との恋を通じて、彼女は光を見いだす……しばらくの間は。
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「私はもろさや不完全さに引かれます。なぜならそこにこそ、人生の真実と美しさを見いだすことができるからです。だからこそ、サムが『ユーフォリア』で成し遂げた仕事を2026ウィンターコレクション『ClairObscur(明暗法の意味)』の物語の一部にしたかった」と、バレンシアガのクリエイティブ・ディレクター、ピエールパオロ・ピッチョーリは説明する。このドラマシリーズは「人間のもろさと強さをプリズムのように映し出すことで、私たちの現実の一端を伝える力」を持っていると彼は述べている。

舞台美術と同様に、この2026-2027年秋冬コレクションのコンセプト全体は、光と影というテーマに基づいている。まずは全身ブラックのトータルルック、続いてチェリーレッドのフード付きドレス、そしてネイビーのピーコートも登場。明暗の異なるこれらの装いが連なる様子は、まるで色見本のようだ。

ピエールパオロ・ピッチョーリは、厳選されたモチーフを用いて、衣服に光が投影される様子を模している。また、陰影の効果を使って、シルエットの美しいコートを立体的に仕立て上げた。かつてヴァレンティノを率いた彼はさまざまな試みを重ねているが、何か新しいものを発明しているわけではない。なぜなら、この「明暗法」は、ルネサンス期のフランドルやイタリアの画家たちが敬愛した絵画技法だからだ。

現代のカラヴァッジョ(明暗法で有名なイタリア人画家)とも称されるピエールパオロ・ピッチョーリは、闇なくして光は存在し得ないことを証明している。それは彼が常に心に留めている考えでもあるのだ。彼にとってバレンシアガの未来は、過去の遺産があってこそ成り立つものであるのと同様に。






※( )内編集部注
translation & adaptation: Akiko Eguchi
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