事業構想に約2年。伴走的な助成プログラムが、事業の大きな助けに
日本財団の助成プログラムにする場合、どのようなステップを踏む必要があるのでしょうか。早坂さんいわく、事業計画書の作成にもっとも時間を費やしたそうです。
●助成金の申請から採択されるまで
早坂さん(以下、敬称略):事業の内容やこれからの経営方針、どうやって売上げを立てどのくらいの利益を見込んでいるのか。そこに私たちの想いも入れ込んで事業計画書を作成しました。
宮城県の障害福祉課の皆さまにも何度も相談をさせていただき、そのサポートがなければ私たちだけで形にするのは難しかったかもしれません。さまざまな参考となる施設を理事長と見学したり、事業構想を固めるのに2年弱かかりました。

――事業計画書以外に複雑な手続きはあるのでしょうか。
早坂:特に難しいことはないと思います。手順を説明すると、まず助成金の申請から事業手続きまでを行える「助成ポータル」サイトに登録するところから始めます。団体名など基本情報を登録した後、申請情報を入力していきます。
申請情報にも事業概要として内容詳細や収支予算などが必要になりますが、こちらはそこまで細かく記載する必要がなく、申請情報の準備に費やした時間は2~3週間程度でしょうか。それに、先ほどお伝えした事業計画書を添えて申請するという流れです。

早坂:私たちが申請したのは2024年度の助成プログラムで、申請期限が2023年10月31日まで。その後、日本財団の担当者から事業に対するヒアリングなどがあり、2024年の3月に正式な助成金額の通知をいただいて助成金が振り込まれました。
●助成金活用後の対応
――事業スタート後も報告書等が必要になるのですか?
早坂:はい。提出書類はシンプルに収益や現場の状況を報告するものになります。報告書以外にも、月に1度は日本財団から現地調査に来られます。
白石:報告書や現地調査と聞くと面倒なイメージがあるかもしれませんが、困っていることを伝えると速やかにフィードバックをいただけるんです。
例えば、私たちなら冒頭に申し上げた井戸水の問題でホウレンソウの収益がしばらく「0円」でした。すると日本財団の担当者さんから「何かあったのですか」とすぐ問い合わせが来て、調査をして適切な支援をいただけました。
この補助スキームは大変ありがたく思っており、助成金給付後もこうして伴走し、サポートしてくれる日本財団の存在はとても心強いですね。

次なる目標に向けて、何としても「ソーシャルファーム大崎」成功を
白石:「ソーシャルファーム大崎」で働く障害者の皆さん、その皆さんをサポートする元B型事業所のスタッフ、全職員にとって意識の改善は必要に思います。
まず障害者の皆さんは、確かに成長しています。ただ、これからは自分たちの働きが工場の運営に直結することも分かってもらわないといけません。そういう意味では、先に申し上げたとおり次のステップとしてスピード感を目標に掲げています。
いっぽうB型事業所は障害者が入所することで事業所の収入が保証されるため、スタッフに「会社のために頑張ろう」という意識が希薄になりがちです。これに対し「ソーシャルファーム大崎」は就労施設であっても一般企業と同様、売上げから給与を支払う事業所です。だからこそ、ここで働く全ての人に、経営的な視点を身につけてもらいたいと考えています。


――チャレンジドらいふとしての今後の目標、展望を教えていただけますか。
白石:チャレンジドらいふは軽度から重度まで、幅広く障害のある方々を支援しています。重度障害者のサポートにおいては時間もお金もかかりますが、そこに対する国の予算は決して潤沢とはいえず、私たちはここを手厚くしてほしいと考えています。
そのために、本来は働けるかもしれない障害者の皆さんを「ソーシャルファーム大崎」のような一般事業所に引き上げ、足りていない部分の予算に充ててほしいというのが私たちの希望です。
この希望を叶えてもらうためには、何はともあれ「ソーシャルファーム大崎」で成功事例をつくり、世の中に広く示すのが大切だと考えています。「脱福祉」型の一般事業所のモデルケースが広く世の中に知れわたり、追随してくれるNPOや福祉団体が出てきてくれることを願っています。
障害があっても、社会に出たい、自分で給料を稼ぎたいと思っている人はたくさんいると思います。そして、そういう方々は少しだけサポートの仕方を工夫すれば実現できると思うのです。障害のある方々の可能性を、私たちが狭めてしまってはいけないと思います。
私たちだけでは発信力が弱いので、このような私たちの想いを世に知らしめてくれる、日本財団の広いネットワークにもぜひ期待したいところです。