
春は夢を最もよく見る季節。東洋医学では、夢を見過ぎる状態を「多夢(たむ)」と呼び、眠りが浅いために生じる不調ととらえています。毎晩のように夢を見たり、一晩で何度も夢を見たり、悪夢や不快な夢を見たりして、起きたときに「夢疲れ」を感じているなら、夕食のとり方を見直してみませんか?
夢を見過ぎる「多夢(たむ)」の状態になるのはなぜ?

みなさんは夢を見ていますか?
と言っても将来の夢の話ではなく、睡眠中に見る夢についてです。
春は夢を最もよく見る季節と言われます。どうですか? そういえば最近よく夢を見るかも⋯⋯なんて思いませんか?
たまに夢を見るくらいならいいのですが、毎晩のように夢を見たり不快な夢を見たりすると、朝スッキリと起きられず寝た気がしない、なんてことも。「夢疲れ」してしまうのはつらいですよね。
春に夢をよく見るようになる理由はいくつかあって、西洋医学的な視点で言うと、三寒四温で寒暖差が激しく自律神経が乱れやすいこと、環境変化によるストレスが多いこと、日の出が急激に早くなり体がその変化に追いつかず明け方の眠りが浅くなる、などが挙げられます。
一方、東洋医学的な視点から見ると、春は「魂(こん)の浮遊」が起こりやすいために夢をよく見るようになる、と言うことができます。
魂と書いて「こん」。聞き慣れない、ちょっと怪しい言葉ですよね(笑)。
魂は「たましい」という字ではありますが、「こん」は私たちが普段「たましい」と呼んでいるものとはだいぶ異なります。
東洋医学で言う魂とは「睡眠や夢と関係の深い精神活動」のこと。
そしてこの魂は「血(けつ≒血液)」に乗って日中は体内をめぐりながら思考・計画・決断などの精神活動に関わり、夜になると血とともに五臓の「肝(かん)」に帰ってくる、というサイクルで活動しています。魂が肝に帰ってきて休むことによって、心身ともに深い眠りにつくことができると考えられているのです。
しかし肝に負担がかかりすぎると魂は夜になっても肝に帰ることができず、居場所のない魂はふらふらと浮遊して不安定な状態に。すると夢をよく見るようになるほか、夢に驚いて目が覚める、落ち着いて眠れない、寝言が多くなるなどの不調を招くと考えられています。
と、この説明を聞いてもいまいち納得できない人も多いかもしれません。この「魂の浮遊」とは、現代医学で解明されている「レム睡眠(眠りが浅く鮮明な夢を見やすい状態)」の増加を数千年前の人々が見出したもの、ととらえてみてください。脳が休息しているノンレム睡眠の深い眠りが減り、脳が活発に活動していて意識が浮き上がってくるようなレム睡眠が増える状態を、古代中国の人々は「魂の浮遊」と表現したのです。そう考えると、少しイメージしやすくなるのではないでしょうか。
東洋医学では、春は肝に負担がかかりやすい季節なので「魂の浮遊」が起こりやすく、眠りが浅くなって夢をよく見るようになるとされています。特に更年期世代は肝の力が低下しているので、この季節の肝への負担も大きく、「魂の浮遊」が起こりやすい傾向があると言えます。そして毎日のように夢を見たり、1回の睡眠で何度も夢を見たり、夢の内容を鮮明に覚えていたり、悪夢や不快な夢をよく見る状態を「多夢(たむ)」と呼び、不調のひとつととらえているのです。
睡眠の質を下げる夕食のとり方とは?

なぜ春は肝に負担がかかりやすいのかというと、みるみる日が長くなって寒い季節から暖かい季節へと急激に変化し、日増しに陽気が強くなることが主な原因。しかしそうした季節的要因とは別に、肝に負担をかける意外な盲点となるのが夕食のとり方です。夕食はその日の夜の睡眠の質に直結する重要な要因であり、魂や肝との関わりも密接なのです。
たとえば白米。薬膳では白米は「気(き=エネルギー)」を補うために必要な基本的食材とされており、特に胃腸の働きを健やかに保ちたいときに推奨されるのですが、食べ過ぎるとかえって胃腸の負担となり、消化の際に余分な水分が生まれて停滞しやすくなります。そして胃腸の消化活動には肝の力も欠かせないため、肝にも大きな負担となることに。カレーライスやお寿司、ピラフ、リゾットなどの白米の多いメニューや、ごはんが進みやすい味の濃いおかずは食卓に並ぶことも多いと思いますが、夕食で白米を食べ過ぎると胃腸の消化活動に大量の気や血が消耗され、肝も疲れ切ってしまうため、夜寝る時間になっても魂が浮遊して眠りが浅くなったり夢を見たりしやすくなるのです。精製された小麦で作られたパンや麺類、糖質の多いスイーツやフルーツなども、食べ過ぎると胃腸や肝に大きな負担となる点で同様です。
脂質の多い食べものは消化活動に多くの気や血を消耗するうえに、消化に時間がかかるものが多くあります。栄養学的には鶏肉(むね肉・ささみ)は2.5~3時間、牛肉は3~3.5時間と比較的消化がいいのですが、豚肉、ベーコン、ハム、天ぷら、うなぎなどは4~5時間、バターは約12時間かかると言われています。これらを就寝前3時間未満の時間帯に食べると、就寝後も消化活動が続くため眠りが浅くなりやすく、夢を見やすくなると言えるでしょう。
胃腸での消化活動には一定の熱が必要なのですが、生野菜や生卵、刺身などの生もの、冷えた飲みものなどの冷飲食は胃腸を冷やすため、胃腸が余分にエネルギーを必要とします。そのため食べ過ぎると不眠や多夢の一因となる可能性が考えられます。サラダは生野菜ではなく温野菜にするなど、加熱調理した食事をとるのがいいでしょう。
激辛料理やアルコールには肝を強く熱する性質があります。肝にたまった余分な熱は「肝火(かんか)」と呼ばれ、イライラや怒りっぽくなる原因になるほか、怒る夢や争う夢などにもつながりやすいと考えられています。
こうした食材を夕食でとり過ぎていると、その夜の睡眠の質が低下しやすく、常習化すると多夢や夢疲れの原因となることも。逆に言えば、夕食のとり方を見直すことが、夜の睡眠の質を高めて多夢や夢疲れの緩和にもつながるというわけです。

