【若葉竜也さんインタビュー】「僕はやっぱり、人が好きです。面倒くさいですけど(笑)」

【若葉竜也さんインタビュー】「僕はやっぱり、人が好きです。面倒くさいですけど(笑)」

1978年、パンクに影響を受けたロックバンドが結集。‟東京ロッカーズ”と呼ばれ、日本のロック界に革命を起こす――。カメラマンとして彼らの‟熱”を記録した地引雄一による原作を、80年代にパンク・バンドのボーカルだった田口トモロヲさんが監督を、パンクコントバンド「グループ魂」でギターを担当する宮藤官九郎さんが脚本を務め映画化した『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』。この映画に若葉竜也さんが出演しています。映画のこと、演技についての思い、若葉さんに聞きました。

台本丸々1冊を、2時間ほどで覚えられました

1978年、セックス・ピストルズに衝撃を受けたカメラマンのユーイチ(峯田和伸)は、ミニコミ誌「ロッキンドール」で東京のアンダーグラウンドなロックシーンを知る。そうして訪れた渋谷のライブハウスで、「TOKAGE」のボーカル、モモ(若葉竜也)と出会う――。映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』のオファーを受けた若葉さんは、「あの『アイデン&ティティ』のスタッフと映画作りができる!」と心が躍ったそう。

「やっとだ。という感じで。フリクション、ザ・スターリン、じゃがたらなどのバンドは知っていましたが、‟東京ロッカーズ”のことはあまりわかっていませんでした。その頃ちょうど阪本順治監督の作品を撮影していたのですが、阪本さんも実は当時、あるバンドの裏方だったそうで、『最高の1枚をやるから』とじゃがたらのアルバムをいただいたりして。監督のトモロヲさんといい、‟目撃者”の温度ある証言を聞くことができたんです」

自分のなかに溜まっていた不自由さのようなものを吐き出したい。そんな時期だったという若葉さん。台本は「自分が書き殴ったんじゃないか?」と思うくらい、自分の思いが言語化されていると感じたそう。

「台本はいつも数日かけて丸々1冊を覚え、そのあと台本に触れない期間を作り、現場で思い出す。そんなサイクルですが、これは2時間ほどで覚えられました。しかもそこから、台本を開くことはありませんでした。それくらい、モモの言葉に違和感がなかった。そのうえで、それを映画に焼き付けられたことが大きかったです」

ファイティングポーズをしっかり取れるものに、真剣に向き合っているか?

映画が始まってすぐ、ユーイチがライブハウスで初めてモモのボーカルを目の当たりにするシーンがあります。それはこうしたシーンによくある聴衆を圧倒する声、とは違い、バンドの一部としてサウンドに溶け込み、歌詞に込めたメッセージを内向きに咀嚼しながら観客に切実な思いを伝えようとする、そんな歌声。実は今作では、ライブ・シーンはオリジナルの音源を使っているとか。つまりそれは「TOKAGE」のモデルであるリザードのボーカル、モモヨさんのもの。違和感のなさに驚かされます。

「役者がとても能動的に動く現場で。バンドメンバーとごはんを食べていて、僕が『練習したいんだよなあ』と言うと、メンバーのひとりがその場で電話してスタジオをとって。(出演者のひとりである)吉岡(里穂)さんにも連絡し、『明日どう?』みたいな感じで。また曲も、聴き込んで聴き込んでいきました。どんなことを考えながら歌っていたんだろう? モモヨさんが伝えたいことに触れにいく、無理かもしれないけど、という感じで」

演奏を練習しても、それが劇中で使われることはありません。でも「演奏のクオリティが低いとほかのなにをしても説得力がない」と、たくさん練習したそう。劇中のモモも、やりたい音楽に妥協はしません。一方で、レコード店を営む実家暮らしで、“かーちゃん”の前ではただの甲斐性なしのかわいい息子だったりします。出がけに母親から、「今日は夕飯食べないの? アジフライだよ!」「…じゃあ食べますっ」なんて言う。ごく自然に、役柄の多面性が生まれています。

「確かにこれは映画で、台本はあるのですが、‟こんなシーンになる予定じゃなかった”ということがたくさん起きました。トモロヲ監督がプレイヤーだから役者の気持ちをわかっていただけて、気持ちを保ちやすかったのはもちろんです。そのうえで役者たちの映画にかける思いが化学反応を起こし、奇跡みたいな瞬間がたくさん生まれたのだと思います。走り抜けたというか、全力疾走というか」

映画は田口トモロヲ監督の‟プロフェッショナル”的な声で、その背景が語られるところからスタートします。ユーイチは「東京ロッカーズ」という新しいムーブメントに立ち会い、その熱を浴び、わけのわからない勢いと高揚感に触れます。そして、そこに飲み込まれて落ちていく人、突然現れて駆け上がる人と出会う――。当時の映像を交えながら、青春映画として駆け抜けます。

「こういう音だから、パンクっぽい格好をしているからパンクではなくて、やりたいこと、やりたい表現をやる。そこにふわっとした才能や縁、タイミングという抽象的な言葉はいりません。あなたたちの衝動でやりたいこと、そこで戦う覚悟はあるのか? 自分が作りたいもの、ファイティングポーズをしっかり取れるものに真剣に向き合っているか? です。その精神は、映画をやっている僕にもわかります。だからこれは懐古的なものではなく、2026年のいまをしっかりと描き出した映画です。観れば必ず、なにかが動き出すと思うんですよね」

提供元

プロフィール画像

大人のおしゃれ手帖web

雑誌「大人のおしゃれ手帖」のオンラインメディア。50代女性が「今」知りたい情報をタイムリーにお届け。暮らし、健康、おしゃれをブラッシュアップするヒントがいっぱいです! 家事に役立つ知恵や、毎日の料理に活かせるレシピ、いつもごきげんでいられるための健康・美容法など盛りだくさん。人には聞きづらい更年期のお悩みに応える記事も充実しています。

あなたにおすすめ