『光灯』という名のギャラリーは、東京・神田金物通りに面したビルの3階にある。この場所で、自分が営む古物店『Goods』が企画展をひらいたのは2024年の年末のこと。
「ホームシック」と題し、これまで各地で集めてきた古物と、4名の美術作家による作品を並べ、販売した。展示のタイトルは、『Goods』のアイテムはどれも引き取り手がいなかったものであることや、この年の暮れは忙しく実家に帰れなかったことに由来する。それに、敬愛するECDの3枚目のアルバム『Homesick』(1995年)から引いたというのもある。作家たちはそうした前提を踏まえ、それぞれ新作をつくってくれた。





年末の神田金物通りの街路樹は黄色く色づき、ギャラリーの窓から手に届きそうな距離にあった。和田竣成(しゅんせい)さんの作品は当初、銀杏の木に「ひっかかってしまって」いた。風の強い日にベランダに干したTシャツが飛ばされて家に帰ってこられなくなった、そんな佇まいでいた。ギャラリーに訪れた人は、ぎょっとしたのではないか。窓の外の木に引っかかっているこれ(ドクロとクリーチャーが鎖で繋がっているもの)は、何だ、なぜここに、どうやって? そもそも作品かどうかも悩ましい。そんな妙なシチュエーションをつくってくれたことに、私はとても満足していた。

会期も残すところ4日と迫った12月25日。ギャラリーに向かう道すがら、昨日まで黄色い葉をつけていた銀杏の樹が刈られ、枝と幹だけになっているのを目にしてギョッとした。どうやらこの日、早朝から周辺の街路樹剪定が行われ、木に引っかかっていた和田さんの作品もろとも切り落とされたようだ。泣く泣く、歩道に落ちた残骸を拾い上げてギャラリーへ階段を上がり、和田さんの作品は、会場へ無言の帰宅となった。作業員からは、作品はどんなふうに見えただろう。
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編集者、ライター 浅見 旬

あさみ・じゅん/デザインスタジオ〈well〉所属、古物らの店『Goods』を運営。作家と協働したアートブックの制作・出版のほか、文筆も行う。

