人生 100年時代と言われる現代では、定年という言葉の響きがかつてとは大きく変わってきました。以前は仕事を終えて悠々自適に過ごす時期の始まりを意味していましたが、今ではキャリアの第2ステージとして、あるいは社会との繋がりを保つ手段として、そして老後資金を確保するために仕事を続ける選択をする方が増えています。
しかし、働きながら年金を受け取る際に避けて通れないのが「在職老齢年金」という仕組みです。一生懸命働いた結果、受け取れるはずの年金がカットされてしまうのではないかという不安は、働く意欲に影を落としかねません。今回は、現在のシニア世代の就業実態をひも解きながら、制度の仕組みや法改正の内容、そして賢く働くためのポイントを見ていきましょう。
65歳以上で働くシニアはどれくらいいる?雇用形態は?
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まずは、現在の日本においてどれほどの方々が定年後も働き続けているのか、その実態を見ていきましょう。
1. 65~69歳で働く人は50%以上、増加し続ける高齢就業者数
日本の労働力人口に占める高齢者の割合は、年々上昇しています。総務省統計局が発表している「労働力調査」の2024年のデータ によれば、65~69歳の就業率は53.6%となっており、2人に1人以上が何らかの形で働いている状況です。さらに 70~74歳でも35.1%の方が仕事に従事しており、高齢で働くことは特別なことではなく、ごく一般的な選択肢となっています。
なお2025年の労働力人口は前年より0.7%増加し、初めて7000万人を突破しました(2025年平均:7004万人)。65歳以上の労働力人口も増加傾向にあり、高齢者は日本の労働市場を支える重要な存在となっています。
また、労働力人口の増加は、2021年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」の影響も小さくありません。企業に70歳までの就業機会を確保する努力義務が課せられたことで、働きたいと願う方が長く活躍できる環境が整いつつあります。
2. どのような雇用形態で働いているのか
総務省の調査によると、役員を除く雇用者のうち、働くシニアの雇用形態は65歳以上では非正規の職員・従業員が7割以上を占めています (2024年データで76.9%)。
具体的な内訳としては、以下のような形態が一般的です。

在職老齢年金とは?支給額が減るラインはどこか
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働き続ける意欲がある一方で、多くの人が懸念するのが「在職老齢年金制度」です。これは、厚生年金保険に加入しながら報酬(給与や賞与)を得ている場合に、その金額に応じて年金の一部または全額が支給停止される仕組みです。
1. 制度の目的と対象となる年金
この制度は、一定の収入がある方の年金を調整することで、年金財源の公平性を保つことを目的としています。対象となるのは老齢厚生年金のみであり、国民年金から支給される老齢基礎年金は、収入に関わらずカットされることはありません。どれだけ高額な報酬を得ていても、老齢基礎年金は全額受け取ることができます。
2. 支給停止される基準額
年金がカットされるかどうかは、基本月額(老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額(毎月の給与に、直近1年間の賞与を12で割った額を加えたもの)の合計によって判定されます。
現在(2026年1月時点)の基準額は以下のとおりです。
・2025年度(2026年3月まで): 51万円
・2026年度(2026年4月以降): 65万円
この合計額が基準額を超えた場合に、超えた分の半額が年金から差し引かれます。
3. 2026年4月からの大幅な基準額引き上げ
上記のように、2026年4月1日から在職老齢年金制度が大きく見直されます。支給停止基準額が現行の51万円から65万円に引き上げられることで、働きながら年金を満額受け取れる方が大幅に増えます。2025年6月に在職老齢年金制度の見直しが行われた当初は、2026年4月からの基準額は62万円とされ、新たに約20万人が年金を全額受給できると試算されていました。
その後、賃金変動を踏まえて基準額が62万円から65万円に引き上げられたことで、全額受給できる人はさらに増えると考えてよいでしょう。
・具体的な計算式
支給停止額(月額)は、以下の計算式で算出されます。
(基本月額+総報酬月額相当額-基準額)÷2=支給停止額
※合計額が基準額以下であれば、年金は全額支給されます。