専門家「医療・福祉は感情面の負担が著しい」
医療・福祉職がメンタルヘルス不調に陥る原因は、個人の性格や根性の問題ではなく、医療・福祉分野ならではの構造にあると専門家は話します。過労死や睡眠を専門的に研究してきた大原記念労働科学研究所の佐々木司さんに、メンタルヘルス不調の原因と対処法を聞きました。
話を聞いた人

公益財団法人 大原記念労働科学研究所 研究部 上席主任研究員 佐々木司さん
千葉大学大学院自然科学研究科を修了後、Institute of Circadian Physiology協力研究員、Karolinska Institute客員研究員を務める。2001年より現職。
社会に欠かせない医療・福祉の仕事。メンタル不調は、その業務特性に起因すると佐々木さんは話します。
佐々木さん
「医療・福祉の仕事は感情労働です。これは米国の社会学者アーリー・ホックシールドが提唱した概念で、仕事のなかで自分の感情を調整しながら他者と関わる労働のことを指します。
医療・福祉の現場では患者や利用者、その家族に向き合い、不安や怒りを向けられることもあります。身体的な疲労以外にも、感情をコントロールし続けることで、感情面の負担が常に発生しています。
こうした負担が蓄積すると、感情エネルギーが枯渇してしまいメンタルに不調を来してしまうのです」

見過ごせない「夜勤」と「長時間労働」の影響
感情面の負担に加え、24時間体制やオンコールなどの労働環境の影響も大きいと指摘します。
佐々木さん
「16時間夜勤は、諸外国で『ダブルシフト(2回分の勤務)』と呼ばれ、日勤の2倍に相当する過酷な労働です。海外では日中の16時間勤務はあっても、生体リズムに反する夜勤を含む16時間勤務はほとんど見られません。
近年、夜勤自体も女性にとって乳がんのリスク要因となる可能性が指摘されており、諸外国では避けられる傾向にあります。このように、長時間・夜勤体制は心身にとって極めて負担の大きい労働といえます。
また心理社会医学の研究では、自分のペースで仕事を進められない職種ほど、その負担をより大きく感じやすいことが明らかになっています」
これらの働き方による負荷の大きさは、過労死の認定基準にも反映されています。

挙げられている時間外労働時間以外の疲労の蓄積要因

