「ちゃんとしていなくていい」と思えるようになった

家族のこと、年齢を重ねること、そして自分らしさ。作品のなかに描かれるテーマは、私たちの日常にも重なっていきます。小林さん演じる則子からも、「〜せねばならない」から少し解き放たれていく感覚が見えてきます。小林さん自身にも、そんな変化はあるのでしょうか。
「あります。そればっかりです、最近」。
家の中をきちんとしなきゃ、毎食後に片付けなきゃ――。そんな“ねばならない”を少しずつ手放せるようになってきたと言います。
「なんで1日3回もお皿洗ってるんだろうって思って。まとめてやればいいじゃないって(笑)」
さらに昨年、体調を崩して入院した経験から、食生活への意識も変わったよう。
「ちゃんと食べていなかったんじゃないかって反省して、それからはもりもり食べるようになりました」
無理をしない。自分に合った方法を見つける。外に歩きに行けないなら、家にウォーキングマシンを置けばいい――そんな発想の転換も、今の自分らしさ。
「暑い日でも雨の日でも歩けるし。リビングにあるなんて、かっこ悪いかなと思いながらウォーキングマシンを導入したんですが、確かに便利なんですよ。でも鍛えるぞって力むと疲れちゃいそうなので(笑)、テレビを見たり、セリフを覚えたりしながら。自分でも、続けられる運動をしています」
家族は、少しずつ「個」になっていく

今回の作品は、「家族とは何か」も大切なテーマ。父、母、姉、弟という役割がありながら、それぞれの個人が描かれます。小林さん自身も、父を見送り、高齢の母をきょうだいで支える今、家族の形の変化を実感していると言います。
「親がいなくなってからの、きょうだいの距離感を想像するようになりました。家族っていうより、それぞれ個々になっていく感じ。でも、親のことで久しぶりにきょうだいのつながりを感じたりもするんです。協力し合える家族がいるのはありがたいなって思います」
家族であっても、ひとりひとりに人生がある。
それは『岸辺のアルバム』が描いてきたテーマそのものです。
わかり合うより、「おもしろがる」
家族の中では親と子、会社では上司と部下。世代間のギャップが話題になることも多いいま、若い世代との距離感について尋ねると、意外な答えが返ってきました。
「そもそもわかり合おうとはしないかもしれないですね(笑)。世代ごとに価値観が違うって思ってるので」。とくに違いを感じるのはお金の使い方といいますが、推し活に大きなお金を使う若い人たちを見て驚きつつも、「そういう価値観なんだとおもしろがれたら、“それどういうこと?”って聞けばいいんですよね」と教えてくれました。
わかり合えなくても、別にいい。おもしろいと思えたら、それだけできっと十分。
どこまでも人は、ひとりひとり。だからこそ、人と生きる日常は、案外おもしろいのかもしれません。

