男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:弁護士と4回デート、それでも進展ゼロ…「この関係、意味ある?」と悩んだ夜
京子からLINEが届いたのは、月曜日の夜だった。
― 京子:海斗、今までありがとう。でもごめん、別れよう。今までありがとう
意味がすぐにはわからなくて、三回は読み返した。
「俺、何かした?」
そう呟きながら、スマホを置く。思い当たる節が、正直ない。
楽しくデートを重ねてきたはずだし、ケンカらしいケンカもしたことがない。ちゃんと大事にしていたし、「ありがとう」など言葉にもしていた。
それなのに、突然の終幕。一体、何が起きたのだろうか。
外資系の美容ブランドに勤める京子と知り合ったのは、友人が主催した代官山で行われた3対3の食事会だった。
京子はハッとするほどの美人で、ひときわ目を引いた。どこか冷たそうな美女という印象とは裏腹に、笑うと少し幼くなり、可愛げもある。
2軒目へ移動の際に、僕たち二人が、たまたま少し後ろの方で歩く形になった。
― これはチャンス。
そう思い、京子を誘ってみる。
「京子さん、良ければ…次は二人で食事へ行きませんか?」
「え?もちろん」
「食事は何が好きですか?」
「なんだろう…イタリアンとか?」
「じゃあ、お店予約しておきますね」
こうして、僕たちはデートをすることになった。彼女のリクエストを汲んで、初デートは六本木のイタリアンにした。
「京子さんは、結構外食派ですか?」
「そうですね。外食が多いかもです。海斗くんは?」
京子の方が5歳上だけれど、そこは全然気にならなかった。むしろ自分より何もかもがしっかりしている感じがして格好よく見える。
「僕、こう見えて料理得意なんですよ」
「え?そうなの?」
「学生時代、キッチンでバイトしていて」
僕は男子の中でも料理ができる方だと思う。そう話すと、京子は身を乗り出してきてくれた。
「え〜すごい!!どんなお料理を作るの?得意料理とかあるの?食べてみたいな」
「京子さんなら、いつでも喜んで作りますよ。逆に京子さんは?家事とかします?」
「意外に、家事はするよ。でも料理は自分ひとりだと、ついおざなりになっちゃって」
そんなことを言いながら、初デートは盛り上がった。仕事の話をしても、遊びの話をしても、何を言っても受け止めてくれる感じがあって、一緒にいると不思議と落ち着く。
「京子さんって、大人の余裕がありますよね」
「そう?まだ33歳だし、そんな大人かな。まぁ海斗くんよりは大人だけど。年齢とか、気にする人?」
「いや、僕はまったく!何も気にしません!むしろ年上の方が好きなので」
「そうなんだ」
初デートでグイグイ行きすぎたかなと思ったけれど、逆にこれが良かったらしい。何だか京子は嬉しそうにしている。
そして気がつけば、もう会計の時間になっていた。
伝票を見ると、コース料理にワインを何杯か頼んで、二人で三万円ほどだった。
― むしろ京子は、年収も自分よりはるかに上だろうし…。割り勘にしないと失礼かな?
そう思ったので、僕は折半にすることにした。
「半分でいい?」
「もちろん。ここ、カード2枚いけるかな」
そう言いながら、京子はサッと自分のクレジットカードを取り出し、この日は折半にした。割り勘の方が、対等な関係でいられる気がしたし、清々しくていい。
「今日はありがとう。楽しかったな」
「こちらこそ。京子さん、また会えますか?」
「もちろん」
こうして、次のデートもすぐに決まった。
そして二度目のデートは、恵比寿の蕎麦屋さんにした。といっても、日本酒をしっぽりと飲みながら、つまみを食べられる雰囲気も良い僕の好きな店だった。
「京子さん、日本酒は好きですか?」
「うん、好きだよ」
「良かった!じゃあ今日は飲みましょう」
結局この日、僕たちは日本酒を5合くらい飲み、すっかり気分が良くなってしまった。すると、普段だと恥ずかしくて言えないようなことも、スラスラと言葉として出てくる。
「京子さん、俺、めっちゃ京子さんのことタイプです」
「そうなの?嬉しい」
「付き合いませんか?僕たち」
「本当に?海斗くん、酔っ払ってない?」
「酔ってないよ〜本気です」
「そうなんだ…。嬉しい。私も海斗くんのこと、好きだよ」
こうして、僕たちは交際することになった。
良い感じで盛り上がっていたが、会計の時に僕はふと気がついた。
「あれ?ごめん…今日、財布家に忘れてきたかも…」
「え?むしろ日中とか大丈夫だったの?」
「うん、スマホのチャージはあるから。財布出すことがなかったから、今まで気がつかなかった…ごめん、今日のご飯代の分、借りてもいい?」
壮絶に恥ずかしい。でもそんな僕を、京子は笑いながら許してくれた。
「そういうこともあるよね。いいよ、今日は私のおごりで」
「マジで?ありがとう!!必ず次回返すから」
「わかった。じゃあ次回、お願いします」
― 助かった〜!
そう思っていた。この時、ちゃんとお礼も言ったし「ご馳走さまです」も言っている。しかも財布を忘れたのは、わざとではない。だからこれが、直接的な原因ではないと思う。
ただこの後も僕は度々財布を忘れることがあり、何度か京子の厚意に甘えてしまっていた。
そして付き合うことになったあと、京子の家に僕が行くことが多かった。
なぜなら、吉祥寺にある僕の家はかなり狭い。一方、麻布十番に住んでいる京子の家は快適で僕の家より断然広いし、居心地も良い。だから必然的に、そこに落ち着いた…という感じだ。
「海斗、今日も家に帰らないの?」
「そろそろ帰るけど…会社行くのも、京子さんの家の方が近いし」
僕はイベント関連の会社に勤務しているのだけれど、オフィスの場所は六本木だった。麻布十番の方が近いし、便利だ。それは京子もわかってくれていたようで、3度くらい京子の家に泊まったら、その後は何も言わなくなった。
しかし、交際3ヶ月くらいたったあと、京子の態度が、少し変わったことに気がつく。うまく言葉にできないけれど、どこかやんわり線を引かれたように感じた。
それは、京子が僕の仕事の状況を聞いてきた時のことだった。
「海斗、最近仕事はどう?順調?」
「どうなんだろう。この前のイベントが終わって、今は少しゆっくりできる時期かな」
「そっか」
僕の会社はイベントが近くなると本当に忙しいのだけれど、そうでない時はのんびり過ごせる。ちょうど大きなイベントが終わったばかりで、この時は、若干時間の余裕があった。この質問の意図はわからなかったが、正直に答えた。
「京子は?相変わらず忙しそうだけど」
「私は毎日必死すぎて、記憶がないくらいだよ(笑)」
「京子は頑張っていて、偉いよね。本当に尊敬する。そういえば、もうすぐ京子の誕生日じゃない?せっかくだから、良い店とか行こうよ」
「え〜いいよ。海斗、高いお店だと支払い厳しいでしょ?」
「そこは半々でいいんじゃない?せっかくの誕生日なのに」
「じゃあお店、どこか選んでおくね」
僕は京子の誕生日を祝う気満々だったが、この誕生日が来る前に、突然別れを告げられてしまった。
一緒にいて楽しかったし、彼女のことを大切に思っていた気持ちも本物だった。たくさん「ありがとう」も「好きだよ」も伝えていた。
ベッドの上で彼女からの別れのメッセージを眺めながら、僕はずっと理由を考えていた。
― なんで急に…?
でも京子にとっては、「急に」じゃなかったのだろう。彼女の中では、少し前から答えは出ていたのかもしれない。
別れを決めたのは一体、いつのことだったのだろうか…。
▶前回:弁護士と4回デート、それでも進展ゼロ…「この関係、意味ある?」と悩んだ夜
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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女が別れを決めた理由は?

