一見、エリート街道を歩んできたように見えるが、その華々しいキャリアの裏側には、数々の苦労があったという。「リーダーはカリスマでなくとも務まる」と語る岩田氏に、自身の経験から導き出した人心掌握術、スターバックスへの思い、そして外資系企業の実態を語ってくれた。

◆社長を目指すのは必然的だった
ーー日産自動車でのサラリーマン生活からスタートし、数々の企業でトップを歴任。最初から「社長」を目指していたのでしょうか。岩田松雄:日産に入社した時の自己紹介で「将来は社長になります」と宣言しましたから、変わった新入社員だったと思いますよ(笑)。実家が小さな商売をやっていた影響もありますが、私にとって社長を目指すのは、高校球児が甲子園を目指すのと同じ感覚。サラリーマンになった以上は頂点である社長になりたいというシンプルな動機でした。
ーーとはいえ、大企業でトップに上り詰めるのは至難の業。どのように「社長」への道を切り開いたのですか?
岩田松雄:日産時代では、社内留学制度を使ってUCLAのビジネススクールへ行きました。当時の英語力はTOEIC300点台からのスタートで、死ぬほど勉強しましたね。その後、大きな転機となったのがゲーム会社「アトラス」の社長就任です。コカ・コーラという安定した外資系トップ企業から、当時年商200億円規模のオーナー系企業へ。当時アトラスは3期連続の赤字企業でした。給料も数百万下がりましたが、「経営者になるためには、ベンチャー企業の方が勉強になると思い飛び込んだんです。そこで経営の立て直しに成功し、経営の面白さと難しさを肌で感じました。
◆新しい会社で成功するには「じっくり観察」
ーー「よそ者」としてリーダーシップを発揮するコツはなんですか。岩田松雄:二つ鉄則があります。最初の3ヶ月は黙って観察し、「一つだけでいいからクイックヒット(早期に成果)を出す。新しい会社に行くと、つい前の会社のやり方を持ち込んだり、「ここがダメだ」と指摘したくなりますが、それは反発を招くだけ。まずはじっくり観察して、これまでの歴史や文脈を理解する。一方で、周囲は「お手並み拝見」と見ていますから、目に見える成果も必要です。私の場合、ザボディショップではボディバターのプロモーションを成功させ、イオンの岡田元也社長(当時)に褒められたことで、周囲の見る目が一変しました。スターバックスでは売上が低迷していた時期に「ワンモアコーヒー(2杯目おかわりサービス)」を導入し、V字回復のきっかけを作りました。それで初めて「この人の言うことなら聞こう」といういわゆるステークホルダーからの信頼が生まれ、改革がやりやすくなっていきます。

