◆急に大人しくなった輩
それまで大声を張り上げていた輩は、窓越しに船井さんを見るなり、急にその勢いは弱まり、ついには何も話さなくなり、一瞬沈黙がつづいたかと思うと、輩の口から信じられないような言葉が発せられたといいます。「あ、あのう。えと、この辺にコンビニありますかね?」
それもそのはず、実は船井さんの外見は輩の数倍も迫力があったのです。身長は189センチ、髪を短く切り、体格はまるでプロレスラー、それに加え、鋭い目つき。その迫力ある風貌に、あおり運転をしていた輩は縮み上がったそうです。
その輩は、少したかぶった声色で「あ、すみません、ありがとうございます。失礼しました」とまで言ったそうです。
「実は、今までにも同じようなことはありました。自分ではそれほど感じないのですが、私って、ほんとうに強面なんだそうです。まあ、学生時代に柔道もしていましたので、いざ取っ組み合いになっても勝てる自信はありましたけどね」
◆いつの間にかどこかへ消えた後続車
その後の展開は、笑ってしまうほど対照的でした。信号が青になると、アルファードは先ほどまでのそりが嘘のように、20メートル以上の車間距離を空けて追従してきたといいます。「もうパッシングも蛇行も一切なし。しばらく走ると、脇道へ逃げるように消えていきました。かっこわるいですね……、あれだけ煽っておいて。実は、これが初めてではないんですよ。これまでも数回同じようなことがあって、よほど怖かったのか、車の横で土下座するやつもいました」
今回取材するにあたり、最初に船井さんとお会いした時は筆者もかなりその強面に驚かされました。たぶん、あの風貌に文句をつける人はいないと思います。
「車という“鎧”をまとったとたん、人間は態度が大きくなるのですかね。たぶんあの輩も当分は大人しく運転するでしょう。でも、あの手の奴らはまたすぐに態度がでかくなるんですよ」
笑みを浮かべながら話す船井さんは、どちらかというととてもチャーミングで、頼り甲斐のある雰囲気なのですが、あの鋭い目つきでロックオンされたら、おそらく誰でもビビるほど迫力がありました。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

