
◆父の暴力で手首の骨折したことも…
穏やかな語り口が印象に残る女性だ。凄絶な過去とは結びつかないほどおっとりと話す。「激昂した父が母を目の前で殴り、私は咄嗟に止めに入りました。すると『引っ込んでろ!』みたいなことを言いながら父が私の手首を相当な力で握ってきたんです。その衝撃で、私の手首は骨折してしまいました」
ゆまさんが高校受験をする少し前の一場面だ。下に2人いる妹は年が離れており、自らが盾になることで両親の諍いを止めようとした。もともと激昂すると手が付けられない父親と、その父親によく似た気性の母親。「私が中学校入学くらいから、徐々に険悪になった」という両親の関係性は、当時すでにお互いにパートナーがいるほど冷え切っていた。ゆまさんは母親から「交際している男性がいる」と告げられ、「どうリアクションをすればいいのかわからなかった」と苦笑いをする。
「父は自分も不倫をしていたのに、なぜか母にパートナーがいることが許せず、その日は暴力をふるいました。結果として警察沙汰に発展し、父が警察で一時保護されている間に、母と私たち姉妹は夜逃げ同然で家をでたんです」
◆夜逃げ後の過酷な生活

「両親は親権をめぐって2年近く調停で争ったと記憶しています。父がいた頃から、『同級生よりも物を買ってもらえるスピードが遅いなぁ』とは感じていましたが、母と私たち姉妹だけの暮らしになると、電気ガス水道が頻繁に止まる生活になってしまいました。
そればかりか、親権を勝ち取った母は、家に帰らないこともしばしばあったんです。たまに帰宅したかと思えば殴る、蹴る……タバコの吸殻を投げつけられたりもしました。もともと怒ると手が出るタイプの人で、小さいとき、宿題をやらないなどの理由で外に締め出されたりもしていました」
ライフラインを止められてしまうほど荒れた生活ぶりともなれば、当然食事もまともにはありつけない。
「高校時代は、朝ご飯と夜ご飯が出てくれば『ラッキー』という感覚でした。冷蔵庫に食材があれば、私が妹たちの分まで作るのですが、そんな日ばかりでもなく……。高校は私立に進学して片親世帯に適用される奨学金をもらいながら通っていました。お昼はお弁当でしたが、当然そんな状態なので、事情を知ってくれている友人のお母さんが余分に作ってくれたりして、ありがたかったですね」

