われわれのような牛肉を扱う飲食店は狂牛病騒動からの25年間、ありとあらゆる困難と闘ってきました。もはや安寧の時間などなく、常に苦しみ、悩んできた。その間、たくさんの競合店が廃業、閉店していく姿も見てきましたし、本当に飲食経営は生き残りをかけたデスマッチだな、と痛感させられました。
※本記事は、「ステーキハウス・ミスターデンジャー」を経営する元プロレスラーの松永光弘氏が上梓した『令和のステーキ店経営デスマッチ コロナ禍に完全勝利も物価高地獄でリングアウト寸前?!』(西葛西出版)より抜粋したものです。

◆豚肉や鶏肉の強みが失われつつある
過酷な経験をしてきたからこそ、強くなれた部分もあります。とにかく闘ってきた経験値がハンパないですから、なにか不測の事態が起きても「狂牛病のときはこうだったから、次はこうなるな」と、その後の展開が読めたり、過去の苦労を乗り越えてきたやり方を実践したりすることで新たな困難をブチ破ることだってできます。これは最高の財産です。これは牛肉専門で生きてきた者だけが取得できた特殊技能だと思います。あんなにも価格が変動し、展開が読めない食材は他にありませんからね。
豚肉や鶏肉は仕入れ値があまり乱高下することなく、安定して調達ができます。いま、日本中に鶏のからあげ店がとんでもない勢いで増えていますが、調理の簡単さや調理スペースが狭くても問題ない点と、コロナ禍を経て需要が増えたテイクアウトの展開がしやすいというのが躍進のポイントだと思います。しかし、最高の強みは原材料の鶏肉が安く大量に安定供給されているということです。
しかし、この狂乱物価の流れでついに鶏肉の価格も上がりはじめています。同じく安定供給されていた豚肉まで価格変動が大きくなってきました。
◆飲食業界にとって戦後最大の苦境に
そこに関わる業者さんは大変だと思います。私たち牛肉専門業者のような過酷な経験がないので、うまいこと乗り切るノウハウもないでしょうし、いままで価格が高騰したことがないから、今後の値動きもまったく想像できないはずです。長年にわたって安価が続いてきた食材の価格が急騰すると市場がパニック状態に陥ることは「令和の米騒動」が証明してくれています。ひょっとしたら、近い将来、唐揚げ1個が1000円という信じられないような時代が訪れるかもしれません。令和ニッポンは、過去最大の苦境に陥っている!
狂牛病騒動、東日本大震災、リーマンショック、およびコロナ禍。たくさんのピンチを乗り越えてきたからこそ断言できることがあります。それは「今この瞬間が、飲食業界にとって戦後最大の苦境である」ということです。

