
少子高齢化や核家族化が進むなか、高齢者の「一人暮らし」はごく一般的なライフスタイルとなりました。しかし、住み慣れた自宅での自由な暮らしの裏には、急な体調不良や転倒の際に助けを呼べず、最悪のケースに至るリスクも無視できません。離れて暮らす親が元気なうちに、家族はどのような備えをしておくべきでしょうか。川淵ゆかり氏のもとに寄せられた相談事例から、高齢親の見守りサービスについて学びましょう。
母との突然の別れ…深夜の留守番電話に残された声
Aさん(50歳)は、妻と大学受験・高校受験を控える二人の子どもとともに暮らしています。Aさんの母親は、車で70分程度離れた場所の戸建て住宅に一人で住んでいました。月15万円程度の年金暮らしです。5年前に父親が亡くなった際、Aさんは同居を勧めましたが、「父親やあなたとの思い出が詰まったこの家に、一人でも住み続けたい」という母親の希望を尊重しました。母親の高血圧は気にかかっていたものの、普段から健康的で元気だったため、本人の好きなようにさせておいたのです。
当時、Aさんは仕事が忙しい時期でしたし、大学受験と高校受験を控える二人の子どもも抱えていましたが、週1回の電話は欠かさず、できる範囲で母親を気にかけていました。
ある日、明け方の4時ごろにAさんはトイレで目が覚め、ベッドに戻って何気なくスマホをみたときのことです。真夜中に、母親からの着信履歴が残っていることに気が付きました。慌てて留守番電話を再生すると、「……、苦しい。助けて……」という、喘ぐような声が残されていたのです。
すぐに折り返し電話をしましたが、電話には出ません。不安になったAさんは、急いで実家へと車を飛ばします。玄関で母親を呼んでも返事がありません。寝ているだけと信じたかったのですが、受話器の横で倒れている母親を発見。すぐに救急搬送したものの、病院に運ばれてまもなく亡くなってしまいました。
母親が好きだったAさんは、あまりのあっけなさに一時は茫然自失となりましたが、受験を控えた子どもたちの前では気丈に振る舞うことで精一杯でした。「もっとなにかできたのではないか」という深い後悔は、いまも消えることはありません。
増える「高齢者の一人暮らし」の実態
少子化や核家族化、高齢化などが相まって、一人暮らしの高齢者が増加傾向にあります。 以前は、地域の近所付き合いなども活発に行われていましたが、最近ではこうしたつながりや、家族関係ですら希薄なケースが増えており、孤独死の数も増加傾向にあるのが現状です。
内閣府の令和6年の高齢社会白書をみると、65歳以上の一人暮らしは男女ともに増加傾向にあることがわかります。昭和55年には、65歳以上の人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、令和2年には男性15.0%、女性22.1%にまで拡大しました。24年後の令和32年には男性26.1%、女性29.3%となると見込まれています。
また、令和7年の高齢社会白書のデータでは、一人暮らしの高齢者数は令和2年には男性約231万人、女性約441万人となっており、令和22年には男性約356万人、女性約540万人までと20年で急増することも予測されています。世帯数としては、65歳以上のいる世帯のうちの半数以上を、夫婦での二人暮らし(8,635世帯)か一人暮らし(8,553世帯)が占めているようです。
