◆日本人の礼儀正しさに驚いた
日本を知り尽くしているマロット氏だが、日本人の礼儀正しさに驚いたことの1つとして、「何でも直接会って話す」習慣を挙げた。大阪の米総領事館の総領事を務めていた頃、多くの日本人が全国各地から彼に会うために総領事館を訪問してきたという。招待状を直接届けるだけのために、わざわざ遠くから来る人も少なくなかった。
「アメリカ人の感覚では、招待状は郵送で十分です。しかし、日本人はわざわざ足を運んで会いに来てくれました。アメリカ人なら効率を重視してメールや電話で済ませますが、この直接訪問する行為が、日本人が相手への敬意を示す文化なのです」とマロット氏は語った。
マロット氏は、このような日本独特の交渉スタイルや意思決定アプローチ、日本人の慎重さや礼儀正しさを理解した上で、米政府の代表として日米交渉の場に立った。「日本人のことは理解できない」というアメリカ人の意見には反論し、日本人を理解するには、日本語だけでなく、身振り手振りや表情、挨拶、相づち、敬語なども含めて理解することの重要性を訴えたという。
マロット氏自身、日本人の考え方は理解していると思っていたが、それでもわからない時は日本のスタイルに合わせて、できる限り礼儀正しく質問するようにしていたという。長年の対日交渉の経験を通じ、こうした文化や価値観を理解していったことがうかがえる。
では、現場で日本人と向き合ってきたもう一人の元米高官は、どのように見ているのか。

韓国語のスペシャリストとして空軍に入隊し35年所属。その間、韓国の米軍基地に2回、日本の米軍三沢基地にも2回駐留した。
中国の米国大使館では駐在武官としての経験もある。統合参謀本部の戦略・計画・政策局では、アジア担当も務めた。空軍准将として退役後、第1次トランプ政権では国務省で日本、中国、朝鮮半島など東アジア地域政策を担当する国務次官補を務めた。韓国語、中国語が流暢で、日本語にも精通する東アジア政策の専門家だ。
スティルウェル氏の夫人は日系3世だ。日常生活の中で、日本の習慣や文化に触れる機会が多かったという。
そのため、初訪日前の日本の印象は、実際に訪問してもあまり変わらなかったという。スティルウェル氏は、馴染みがない日本の習慣や生活に戸惑っていた部下に、日本人の性格や手法について多くの助言をしたことがあったという。
◆日本人は「イエス」と言わない
日本人の性格について、スティルウェル氏はこう語る。「日本人は非常に時間に正確で礼儀正しい。ただ、交渉の場では簡単にイエスとは言わない」
さらに、日本人特有の表現についてこう説明する。
「日本人が『難しいです』と言えば、答えはノーだ。『多分』と言っても、やはりノーだ」

