◆交渉を動かす「飲みにケーション」
そして、スティルウェル氏は、交渉手段として「飲みにケーション」の大事さを部下に伝えたという。スティルウェル氏はこう説明する。「まず事前ミーティングをする。そのあと一緒に食事に行く。生ビールで乾杯して酒を飲む。そして酒の席で真剣な話をする」
「飲みにケーション」の翌日、二日酔いの状態でようやく「イエス」という答えになる。それが日本文化だと、部下に助言したそうだ。
そんなスティルウェル氏でも、日本に駐留後、初めて知ったことや驚きもあったという。駅のプラットフォームで電車待ちの列があることも、訪日後に初めて知ったという。知らずに列に割り込む形で待っていると、日本人がイラッとすることも学んだ。
◆三沢基地での経験と学んだ日米の違い

部下の不祥事があり、テレビカメラの前で謝罪することになった。だが、日本式の謝罪方法を知らず、自分のやり方でやったら批判された。その後、日本式の適切なお辞儀の角度と秒数を学び、日本式の謝罪方法を何度も練習したという。
日米は、習慣や文化に違いがあり、当然、交渉方法にも違いがある。スティルウェル氏は、日米の交渉相手との間に自然な摩擦があるとし、そのスタイルの違いを「アメリカ人はせっかちで、手っ取り早く問題解決をしたがる。日本人は、相手のことを知るまでは、決断を慌てず、問題解決を優先させない」ことだと強調する。そのうえで、自身も日本のスタイルを十分に理解せず「アメリカ人は社交辞令や世間話を省き、いきなり本題に入る。要求を提示し、受け入れを迫る。アメリカ側が苛立ちを見せると日本側は渋る」状況に陥ったという。こうした摩擦を背景に、日本側には在日米軍との調整を担う組織が整備されていったという。
スティルウェル氏は、日米政府間の交渉は、「変化を求めるアメリカ」と「現状維持を望む日本」という構図が一般的だと指摘。物事を変えることに熱心で常に急いでいるアメリカ人と現状に満足している日本人の間に違いがあるのは自然なことであり、「アメリカ側はどのようにして物事を変えたいか明確に日本側に説明する必要がある」と話した。

