再現しないから面白い。自然に委ねる酒造り
現代の食品製造は、再現性が重視されます。 いつ飲んでも同じ味、同じ品質。それを安定して実現できる技術。 戸田さん自身も、その精度の高さには強く惹かれているといいます。
「再現性が高く、きれいに揃った味をつくる技術は本当にすごい。でも、 微生物って生き物だから、毎回同じにはならないんですよ。昨日と今日で、発酵の進み方が全然違う。それが“生きてる”って感じがして、僕はそっちのほうがワクワクするんです」

思い通りにならないからこそ、生まれる個性がある。 その揺らぎこそが、発酵の魅力であり、酒のエネルギーだと戸田さんは言います。
だからこそ、戸田さんのミード醸造所には断熱材を入れていません。 外気温の影響を受ける。季節によって発酵の表情が変わる。 コントロールしすぎず自然の揺らぎを受け入れる。
それが戸田さんのミード造りのスタイルです。
鹿児島との出会い、そして移住
鹿児島を訪れるようになったきっかけは、 いちき串木野市の焼酎蔵白石酒造さんの焼酎でした。 白石酒造さんの無肥料・無農薬で原料を育て、原料づくりから酒造りまで一貫して行う姿勢と、力強さのある味に強く惹かれたそうです。
「“こんな焼酎があるんだ”って衝撃でした。”焼酎に対してのイメージを全部変えられた”感覚。この人の近くで学びたい、って自然に思ったんです」
一般的に、肥料を入れれば芋は甘くなり、旨味も増し、生育も安定します。 「糖度を上げて“わかりやすい美味しさ”をつくることはできる。でもその分、酸味とか苦味とか、そういう迫力のある要素が削ぎ落とされてしまう気がして。生で食べたら、少し荒々しく感じるような味わいが、発酵すると逆に旨さに変わることがあるんです。そういう職人的な感覚の部分を、白石さんはグッと持っている方。」 その“反転”こそが、発酵の面白さだといいます。
さらに、鹿児島には信頼する養蜂家さんの存在も。ミードに欠かせない蜂蜜の生産者がいることも大きかった。
尊敬する蔵元、原料の生産者、応援してくれる取引先。 いくつものピースが揃った瞬間、「じゃあ行こう」と決めたそうです。

