◆父が運転する水色のコンパクトカーであおり運転被害に

ベタ付けが続き、短いクラクションまで鳴らしてきたそうだ。
「完全に“あおり”でしたね」
父親は談笑をやめ、ミラーを見つめたまま無言になった。連続してクラクションを鳴らされた瞬間、ハンドルを切り車を止めた。
「父はドアを開けて、相手の車に向かったんです。道幅は狭くて、後続車は止まるしかありませんでした」
◆父の一言で顔色が一変…
父親は運転席をのぞき込み、低い声で問いかけた。「そんなに遅かったか?」
セダンに乗っていた若い男性たちは、一斉に顔色を変えた。そして、助手席と後部座席の2人が慌てて車から降り、「すみませんでした」と頭を下げたのだ。運転席の男性は視線を上げられず、小さくうなずいていた。
父親は誰にも触れず、車体にも手を出していなかった。
「二度とやるな!」
それだけ告げると、車に戻ってきたそうだ。西田さんの父親は、地元で名の知れた人物。いわゆる“非カタギの世界”に身を置いていた人間だという。外から見れば迫力のある風貌だった。
「家庭では穏やかな人だけど、若者たちは父の雰囲気に圧倒されたのかもしれませんね」
セダンの3人はしばらく動けず、西田さんの車を見送ることしかできなかった。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

