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「参政党ブームは陽キャの推し活です」元“右翼”雑誌編集者が読み解く“新しい右翼”の正体

「参政党ブームは陽キャの推し活です」元“右翼”雑誌編集者が読み解く“新しい右翼”の正体

◆ネット右翼が陰キャなら参政党は真正の陽キャ

 20代の頃はSNSサイトのコミュニティで靖国問題などについて発信するいわゆる「ネット右翼」でもあった梶原氏。ネット右翼と参政党支持者の気質にもまた、大きな隔たりがあると話す。

「『ネット右翼』が活動を始めた’00年代初頭はまだ世の中にスマホも普及しておらず、活動と言えば、ネットで各自が自分の主張を書き込むくらい。今で言う“陰キャ”的な存在でした。’10年代にはネット右翼の一部から『行動する保守』と呼ばれる人々が登場し、一部は『在特会(在日特権を許さない市民の会)』に合流します」

 しかし在特会のデモは在日コリアンを罵ったり旭日旗を掲げたりと、「右派の中でも敬遠される要素が大きかった」という。

「一方、神谷氏は漫画『ワンピース』が好きで、一時期は『ワンピースのような政治をしよう』というキャッチフレーズを掲げていた時期があったほど。『仲間と一緒に活動する』ことを重んじる、いわゆる“陽キャ”気質。参政党は支部も多く、チラシ配りなどのボランティアにもスキマバイトのように気軽に参加できます。私個人は集団行動が苦手で、保守系の集会に行っても脱力気味にシュプレヒコールをしていたのですが(笑)、今の参政党ブームを見ていると、仲間と一緒に候補者を応援する、ある意味“推し活”的な楽しさから来ているように思います」

 党員たちの外見にも、有権者に警戒心を抱かせない工夫が見られるという。

「先の参院選で東京選挙区から当選したさや(塩入清香)議員はオフィスカジュアル風の清楚な服装で演説に臨んでいましたし、国会に登院する際は、議員が皆スーツ姿でした。’25年8月には神谷代表と、ドイツの極右政党『AfD』党首の会談が報じられましたが、お互いシックなスーツ姿で、傍目には『極右』と判断がしづらい。ドイツではAfDをはじめ、ネオナチの一部はスキンヘッドをやめ、一般市民に好感を得られるような路線に移行しており、彼らはこうした海外の動向を取り入れることに長けているのです」

参政党ブームは陽キャの推し活です 梶原麻衣子
’25年7月16日、JR大森駅前で演説を行う参政党・さや候補と、応援に立つ後藤翔太候補(撮影=松岡瑛理)
 ’25年9月7日には石破首相が記者会見を開き、首相の座を退く意向を表明した。今後の政局の見通しが混沌とする中、「岩盤支持層が自民党に戻る可能性は低い」と指摘する。

「安倍元首相に力があった時代の自民党は自分たちより右の政党が登場するたびに、彼らが伸びないよう議員の引き抜きを行ってきました。神谷氏もその流れか、参政党結成前に自民党から出馬しています。ただ、これは党に力があったからできたこと。保守層が分裂を続ける今、同じやり方は難しい。こうした中で参政党がさらに支持を広げていく可能性もあります。一歩間違えれば報道が再び、躍進の“養分”を与えることになりかねません。だからこそメディアには参政党の思考や手法をよく分析してほしいです」

 参政党は自民党を含む既存政党を批判し、あくまで「国民の側」に立つ姿勢を堅持することで、右左を問わない一般層の支持を広げていった。既存の「右派」の枠に収まりきらない部分があるからこそ、その戦略に正しく目を凝らすことが必要だ。

◎編集者・ライター 梶原麻衣子
1980年、埼玉県生まれ。中央大学文学部卒業。『月刊WiLL』、『月刊Hanada』編集部を経てフリーの編集者・ライター。政治系・安全保障系を中心にインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の企画・編集・構成(ブックライティング)などを手掛ける

◎「“右翼”雑誌」の舞台裏(星海社新書)
現代日本を代表する二大保守雑誌『Hanada』『WiLL』。元編集者が、舞台裏を明かし、両誌が右派言論に、ひいては日本の言論界に与えた功罪を分析する

参政党ブームは陽キャの推し活です 梶原麻衣子
取材・文/松岡瑛理(本誌)

―[異端の常識]―

【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san
配信元: 日刊SPA!

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