「美しい」を見つめ直すためのヒントを探った、&Premium143号(2025年11月号)「美しい、ということ」より、〈SIRI SIRI〉デザイナー・岡本菜穂さんの暮らしに寄り添う"美しいもの"を特別に紹介します。



岡本菜穂さんにとって「美しいもの」とは。

物心ついた頃から、建築資材などのカタログを見るのが大好きだったんです。図鑑を眺めるようにネジなどに見入っていました。現在はスイスに住んでいますが、今もホームセンターに行って資材を見ているとワクワクします。そういった工業製品に惹かれる一方で、大人になって手工芸を知ると、それもまたとてもきれいだと感じるようになりました。だからこそ、手業と工業が共存しているものに強く惹かれ、それは、私のジュエリーデザインにも影響を与えていると思います。例えばアルミのお盆。アルミという工業的な素材に、手による鎚目(つちめ)が施されています。ヴィンテージのガラスキャンドルプレートも、メーカーの製品でありながら、職人さんの手が生かされている。籐編みサンプルは、引退する職人さんからいただいたもので、とても美しく、こんな編み方があるのかと勉強になります。糸のサンプルもまた、デザインのインスピレーションの源になっています。
岡本菜穂〈SIRI SIRI〉デザイナー
ガラスや籐といった身近にある自然由来の素材を使って、工芸とコンテンポラリーなデザインを融合させたジュエリーブランド〈SIRI SIRI〉を2006年にスタート。
photo : Satoshi Yamaguchi edit & text : Wakako Miyake

BEAUTIFUL THINGS / 美しい、ということ。&Premium No. 143
洗練された大人が選ぶのは、心がときめく「美しいもの」や「美しいこと」、そして自分らしい美しい生き方ではないでしょうか。いまの時代、効率や成果が大切にされる一方で、夕陽の輝きに見とれたり、花のひらく姿に心を澄ませるといった感覚が、少しだけ後回しにされているようにも感じます。けれど「美しい」と感じる心こそが、私たちの日々を本当に豊かにしてくれるのだとは思います。この一冊では、住まい、装いや日用品などのもの選び、ふるまいや言葉、そして生き方にいたるまで、Better Life の礎となる「美しい」を見つめ直すためのヒントを探ってみたいと思います。
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