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警察官の目の前で缶チューハイを…飲酒事故「隠ぺい工作」なぜバレる? 弁護士が警告する「発覚免脱罪」の重すぎる代償

警察官の目の前で缶チューハイを…飲酒事故「隠ぺい工作」なぜバレる? 弁護士が警告する「発覚免脱罪」の重すぎる代償

桜前線が日本列島を北上中だ。春の訪れとともに、お花見や歓送迎会など、親しい仲間と杯を交わす機会も増えていることだろう。しかし、楽しい宴の裏には「飲酒運転」という重大なリスクも潜んでいる。

「車で来たけれど、乾杯の一杯だけなら」「少し時間を置けば大丈夫だろう」……。こうした甘い油断が、取り返しのつかない惨劇を招く。中には、悪質な飲酒運転事案において、事故後にさらなる隠ぺい工作を図るケースも見受けられる。

先日も長野県で、交通事故を起こした男が、駆けつけた警察官の目の前で酒を飲み、飲酒運転の発覚を免れようとしたとして逮捕された。

「その場で飲み直せばごまかせる」という短絡的な発想について、数多くの交通事故案件に携わる鷲塚建弥弁護士は、「そうした行為は通用しないどころか、かえって罪を重ね、刑期を重くするだけ」と断じる。本記事では、飲酒運転の隠ぺいを厳罰に処す「過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪」について解説する。

警察官の目の前で缶チューハイを…

長野県の事件が起きたのは今年1月。自営業の男(30代)が運転する車が県道のセンターラインを越えて対向車と正面衝突し、相手側の50代男性に軽傷を負わせた。

通報を受けて現場に到着した警察官が事情を聴こうとしたところ、男はあろうことか、警察官の目の前で缶チューハイ1本を飲んだという。

男の車内からは空になった酒類の容器も見つかっており、警察官が到着した時点ですでに酩酊状態であったとみられている。後の呼気検査では、現場で飲んだ分を差し引いてもなお、基準値を超えるアルコール成分が検出されたと報道されている。

長野県警は男を「過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱」の疑いで逮捕。男は容疑を否認しているというが、もし本当に飲酒運転をしていた場合、この「あえて追加で飲む」という行為が、自身の首をさらに締めることになる。

隠ぺい工作によって「12年以下の拘禁刑」の可能性

この事件で適用された「過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪」は、自動車運転死傷処罰法4条に規定されている。

条文を要約すれば、同罪は、アルコールや薬物の影響で運転に支障が出るおそれがある状態で事故を起こし、人を死傷させた者が、その影響を隠すために「さらに酒を飲む」「現場を離れて濃度を下げる」といった行為に及んだ場合に成立する。法定刑は「12年以下の拘禁刑」と極めて重い。

通常、飲酒によって人身事故を起こした際に問われるのは「過失運転致死傷罪」あるいは「危険運転致死傷罪」だが、事故後に飲酒をごまかそうとする行為が加わると、この「過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪」の対象となり得る。

鷲塚弁護士によれば、本罪はそれ単体で「不注意で人を死傷させる過失行為(過失運転致死傷)」を構成要件として含んでいる複合形態の犯罪であるため、通常の過失運転致死傷罪と単純に併科(併合罪として刑が加重)されるわけではなく、それを含めた「過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪」一罪として処理されるという。

また、より重い「危険運転致死傷罪」(正常な運転が困難な状態での運転など)が成立する場合に発覚免脱行為が行われても、「過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪」の刑をさらに積み上げるような処理はなされない。「危険運転致死傷罪」一罪として処理される。

これらの処理には法的な合理性があると、鷲塚弁護士は解説する。

「もし逃走や隠ぺいによってさらに刑が重くなりすぎる設定だと、加害者に『逃げ切り』を目指すさらなる動機を与えかねません。本罪はあくまで、危険運転の証明が困難になった場合を補充する目的で位置づけられています」

一方で、発覚免脱のために現場から逃走した場合は、救護義務違反罪(ひき逃げ)との併合罪として厳しく問われることになる。

飲酒運転をごまかそうとすれば刑が重くなり「逃げ損」に

飲酒運転をごまかそうとする行為は、結果として「逃げ得」ではなく「逃げ損」を招く。科刑上の処理において、その差は明白だ。

鷲塚弁護士は、仮に過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪(法定刑の上限:拘禁刑12年)と救護義務違反罪が併合罪となった場合、処断刑の上限は「拘禁刑18年」にまで引き上げられると指摘する。

これに対し、通常の飲酒人身事故で逃げた場合(酒気帯び・酒酔い運転罪、過失運転致死傷罪、救護義務違反罪の3つが重なったケース)の上限は拘禁刑15年だ。

つまり、飲酒をごまかそうとして隠ぺい行為(発覚免脱)に及んだケースでは、通常の飲酒ひき逃げよりも拘禁刑の上限が3年も重く設定されている。法の網を潜ろうとする悪あがきは、むしろ自身の刑期を大幅に伸ばす結果に直結するのだ。

物損事故や検問での「ごまかし」はどう評価されるか

ここで疑問が生じる。自動車運転死傷処罰法4条には「人を死傷させた場合において」との規定があるが、物損事故や検問の場面での隠ぺいはどうなるのか。

鷲塚弁護士は「自動車運転死傷処罰法は、人を死傷させる行為を特に重く処罰する趣旨の特別法です。そのため、物損のみにとどまる場合や、人身事故に至らない段階での飲酒検問をごまかす行為には、4条(過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪)そのものは適用されません」と話す。

しかし、条文の要件に当てはまらないからといって、隠ぺい行為がおとがめなしになるわけではない。

「たとえ人身事故ではないケースでも、飲酒をごまかそうとした事実は『反省に乏しい態度』や『犯行後の情状の悪質性』として厳しく評価されます。その結果、起訴するかどうかの判断や、有罪となった場合の量刑(刑の重さ)において、不利に働く可能性は十分にあります」(鷲塚弁護士)

科学の眼から逃げ切ることは不可能

前述した長野県の事件のように、「警察官の目の前で酒を飲む」という強弁は、現代の捜査技術の前では無力に等しい。現場を離れて酔いをさまそうとしたり、大量の水を飲んだりしても、捜査機関は客観的な証拠で立証を進める。

「一般に、飲酒運転では呼気検査や採血の結果、飲酒量・時刻に関する供述、さらには防犯カメラ映像やレシートなどから、体内アルコール濃度の推移を逆算します(いわゆるウィドマーク法など)。これにより、事故時点の酔いの程度や、事故後の隠ぺい行為の有無が詳細に検討されます」(鷲塚弁護士)

事故発生時刻と発見・通報時刻のズレ、防犯カメラや目撃証言、スマートフォンの位置情報、コンビニや飲食店のレシート、監視カメラ映像などの客観証拠と、医学的知見に基づくアルコール濃度の時間的推移を組み合わせることで、「事故前から飲酒していた」「事故後の飲酒は発覚を免れる目的だった」と認定される事例は少なくない。

実際の裁判例でも、事故後に現場から離れて飲酒や車両の隠匿を行った行為が「過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪」に該当するとされ、有罪・実刑判決が言い渡されているケースがある。「隠そうとしても高い確率で発覚し、むしろ罪が重くなる」という冷徹な事実を、すべてのドライバーは自覚すべきだろう。

配信元: 弁護士JP

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