男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:「何が悪かった?」付き合って4ヶ月でグループ旅行。直後に、彼女が別れを切り出したワケ
何がダメだったのだろうか。マッチングアプリで出会った美香とは、今日で三度目のデートだった。
三回もデートをしたし、偶然ではあったものの僕の友人たちにも紹介をした仲だ。
だから僕の中で、ほぼこのデートで確定だと思っていた。
しかし今、美香はさっさと帰ろうとしている。だから、僕は店前で思わず捕まえてしまった。
「え?もう帰るの?」
初回のデートも二度目のデートも2軒目まで行って相当盛り上がっていた。美香がお酒が強いのも知っているし、22時半に帰るようなタイプではない。
「もう1軒行こうよ」
そう誘ったのに、美香はアッサリと断ってきた。
「ううん、今日はもう帰るね」
しかしそう言いながら、駅とは反対方向に歩き始めた美香。
― え?この後、もしかして別の約束があった…?
そんなモヤモヤを抱えたまま解散となってしまった僕たち。何よりも理解できないのは、美香とこれっきりになってしまったことだった。
Q1:マッチング後の初デートで、好感度が高かった男の言動は?
美香と最初にマッチした時、僕は相当舞い上がった。顔がすごくタイプだったし、直感ですごく「いいな」と思ったから。
そして何度かやり取りを終え、すぐに会うことになった僕たち。
初デートから気合を入れて、僕は恵比寿の『アーティショー』を予約した。
「初めまして、美香です」
身長は165cmくらいだろうか。すらっとした長い手脚に、僕の拳くらいしかないような小さな顔。
「初めまして、達也です。美香さん、すごい顔小さいですね」
思わずそう言ってしまうくらいだった。
カウンターでの食事は距離が近く、少し緊張したものの、ここの店の適度なワイガヤ感が、僕たちの会話を自然に盛り上げてくれる。
「美香さん、お住まい目黒でしたよね?」
「そうです。達也さんは、三宿でしたっけ?」
「はい。職場が渋谷で。美香さんは?」
「私は今、品川です」
美香は、IT関連の会社に勤めていると言っていたが、職種はエンジニアだという。
「そうなんですね!かっこいいっすね」
「ありがとうございます。達也さんもIT系ですよね?」
「そうなんですよ」
僕はエンジニアではなく広告営業のほうなので、ITといっても仕事内容は全然違う。しかし共通の話題は多くあり、とても心地よい。「フランス産セップ茸のムニエル」を食べながら、そんなことをしみじみ思っていた。
「失礼だったら申し訳ないのですが、美香さんみたいに華やかで話しやすい方がエンジニアって意外です」
「私、コツコツとひとりで作業するのが好きなんですよね。だからコミュ力高い営業職の方とか本当に尊敬します」
「いやいや、そっくりそのまま、お言葉お返しします!僕はひとりで細かい作業とかするのが苦手なので、尊敬します」
こんな話をしながら思わず二人で笑い合う。美香の笑顔がとても自然で、僕は心の底から「この子、すごく素敵でいいな」と思った。
なので食事が終盤に差し掛かると、僕は2軒目のことを考えていた。
「この後、まだお時間大丈夫ですか?良ければもう1軒どうですか?」
すると、美香が驚いた顔をしてこちらを見ている。その反応を見て、しまったと思う。
― 初回で2軒目に誘うのはまずかったかな…。
僕は慌てて言葉を足す。
「あの、変な意味じゃなくて。すごく楽しいので、もう少し一緒にいられたら嬉しいなと思ったんです。でも本当に、無理しなくて大丈夫なので」
美香は、こちらを見て微笑んだ。
「私も、まだもう少し一緒にいたいなと思ったので、嬉しいです。ぜひ行きましょう。どこがいいですか?」
「え?いいんですか?」
「もちろんです」
こうして、2軒目も非常に盛り上がり、次回のデートの日程もちゃんと決めてから解散した。
Q2:女が三度目のデートで“なし”と思った理由は?
そして二度目のデートも同じように楽しく盛り上がり、気がつけば三度目のデートとなった。
過去二回とも、美香は最高だった。
話も合うし、ちょっとミステリアスで陰のある感じも好きだった。美香の喋りすぎず、でも静かすぎるわけでもない…その塩梅がとてもよく、居心地も良い。
そして二回とも2軒目まで行き、かなり遅くなっても美香はずっと楽しそうにしてくれていた。
― いよいよかな…。
そんなことを思いながら、三度目のデートに挑む。今日は三茶にある僕の行きつけの創作和食の店を押さえた。行きつけなので店主も知っているし、大切な人しか連れて行きたくない店だ。
だから店へ来た美香を、真っ先に店主に紹介する。
「こちら、美香さんです。こちら、店主の大輔さん」
「どうも、いらっしゃい」
挨拶をし終えたところでビールを頼み、僕たちのいつも通りの楽しいデートが始まる。
しかししばらくして、同じく店の常連で、顔見知りの橋本さんがやってきた。
「あれ?達也じゃん。何やってんの」
「いや、見てわかるでしょ(笑)デートですよ」
「へーいいなぁ」
同じように橋本さんにも美香を紹介し、そこから僕はしばらくグラスを持ちながら、立ち話で、橋本さんと盛り上がっていた。
「達也さん、本当に常連なんだね」
その様子を見て、美香が僕を見上げている。
「ごめんね、ほったらかしにして。ここの常連たち、みんな仲良くて」
「そうなんだ。楽しそうで何より」
結局橋本さんのウザ絡みに耐え、美香の元へ戻ると美香はスマホをいじっていた。邪魔しては悪いと思ったので、僕もスマホを開いてみる。すると、ちょうど今ハマっているゲームがいい感じに盛り上がっており、しばらく隣でログインしていた。
しかししばらくすると、僕のグラスが空になっていることに気がついてくれた美香。
「あ…達也さん、飲み物がないみたいなんだけど、何飲む?」
「あぁ、じゃあビールで。ありがと」
「達也さん、ゲーム終わった?」
「今ちょうど良い感じ。美香ちゃんは?終わった?」
「私は終わるも何も、ただ達也さんを待っていただけだから」
「そっかそっか」
キリの良いところでゲームを終わらせ、僕は美香と向き合う。
「で、なんだっけ?」
「何が?」
「何の話をしていた?僕たち」
「んー…特に何も?」
「そっか。じゃあいっか」
こうしてこの日は、少し静かに食事をした。けれども別に僕はベラベラと話さなくても良いと思っている。
こうやって、沈黙も楽しめる人がいい。
その点、美香は無駄に話さなくても良いのが楽だった。
「達也さんって、意外に静かなんだね」
「無駄に話すのが嫌いで。だからこうやって、静かに食事ができるの、助かる」
「そうなんだ」
こうして、この日僕たちはしっぽりと飲みながら食事を楽しんだ。そして店を出て、飲み足りない僕は、当然のように美香を2軒目へ誘う。
「飲み足りないから、もう1軒行こうよ」
もちろん、付いてきてくれると思った。しかし首を横に振り、さっさとどこかへ行ってしまった美香。
― あの時、他の誰かと連絡取り合っていたとか…?
そんなモヤモヤを抱えつつ、結局この日以来、美香とは会えていない。三回もデートし、ほぼ交際確実だったはずなのに、どうしてこうなってしまったのだろうか…。
▶前回:「何が悪かった?」付き合って4ヶ月でグループ旅行。直後に、彼女が別れを切り出したワケ
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:9月21日 日曜更新予定
女が三度目のデートで男を見切ったワケ

