今週のテーマは「女がたった一度のデートで未読スルーになった理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:「なぜ2回目がなかった?」年下女性との初デートで、44歳男性が陥った“恥ずかしい勘違い”
LINEが、孝雄から入ってきているのは知っている。なぜなら、私は基本的にすぐに既読をつけるタイプだからだ。
― Takao:果林ちゃん、前に話していた西麻布の鮨、いつ行く?
長押しをして既読をつけないまま文面を確認する。
ただ、私はもう彼とご飯へ行く気はない。むしろ、会う気すらないし会いたくもない。
― Takao:何か、前回気に触るようなことしたかな?
二通目に入っていた、このLINE。
これを見て、私は正式に彼をブロックした。
孝雄と出会ったのは、先輩である美香さんが連れて行ってくれた西麻布のバーだった。美香さんはかなり華やかな人で、昔は相当遊んでいたらしいが、一緒に飲んでいると、そこに美香さんの知り合いがやってきた。それが、孝雄だった。
「タカオっち、久しぶり〜」
「おぉ。美香。久しぶりじゃん。元気だった?」
「元気だよ。タカオっち、1人?せっかくだから、一緒に飲む?」
親しげに話している二人を眺めていると、美香さんが孝雄にシャンパンをねだった。そしてそれをすんなり受け入れた孝雄。
結果、私まで“おこぼれシャンパン”が頂けることになった。
それをきっかけに孝雄と話していたのだが、孝雄はとても仕事ができて、しっかり稼いでいる経営者らしい。
「果林ちゃんはね、今ヘルスケア関連のベンチャー企業で営業をしているんだけど、すごく優秀なんだよ。タカオっち、そっち系も詳しかったよね?」
「すごいですね」
すごい人のはずなのに、孝雄はとても謙虚だ。
「いやいや、全然何も。もう半分くらい引退しているようなものだし」
「え?失礼ですが、孝雄さんって何歳なんですか?」
「僕は今44だよ」
けれども、私がお世辞を言ったのが良くなかったのかもしれない。
「お若く見えますね」
営業職のクセで、つい褒めてしまった。すると、孝雄はとても嬉しそうにこう言ってきた。
「本当に?嬉しい。よく言われるんだよね」
― そうなの?
たしかに、年齢の割には多少若くは見えると思う。健康的な肌をしているし、体も引き締まっていそうだ。でも“よく”言われるほどなのかと言われたら、わからない。たぶん、年相応。
でもこれは私が勝手に褒めたことだし、褒められたら誰でも嬉しいはず。
そしてこれが功を奏したのか、孝雄は美香さんにねだられ、「もう1本シャンパンを開ける」と言い出した。
「どうする?もう1本飲む?」
「いや、でももう既に1本空いてるので…」
そう遠慮をしたものの、孝雄はこちらに気を使わせないようにしてくれたのか、とても優しかった。
「僕はどうせ飲むから、こちらのことは気にせず。ただ、無理はしないでね」
「じゃあせっかくなので。ありがとうございます」
そしてこの夜は、三人で楽しく飲み明かした。
また連絡先も交換したので、この翌日、お礼のLINEを誠意を込めて打った。
― 果林:昨日はありがとうございました!ご馳走さまでした。孝雄さんのおかげで、とっても楽しくて、素敵な時間になりました。また、ご一緒できますと幸いです。
打った後に、「あまりにも定型文すぎたかな」とも思った。でもこれくらいでいいだろう。
そう思っていると、孝雄から食事の誘いの連絡が来た。
― Takao:良ければ、次は仕事などの話も含めて、ご飯へ行きませんか?お連れしたいお店があるので。
孝雄の仕事の話を聞いてみたい。
そう思ったので、私は快諾して、二人で食事へ行くことになった。
孝雄が予約してくれていたのは、神谷町にあるフレンチレストランだった。お店はとても素敵でかつ高級店だ。
少し緊張しながらもお店へ向かうと、既にウェイティングエリアに孝雄は着いており、慌てて挨拶する。
「こんばんは。今日は宜しくお願い致します」
しかしこの時から、そもそも私と孝雄の認識は違っていたのかもしれない。
「そんな堅苦しい挨拶やめようよ、笑。今日は楽しく食事をしよう」
こうして席へ案内され、二人きりでの食事が始まった。ただし、そもそも論として。他に誰かいるのかとも思っていたし、二人きりなのは少し意外だった。
それに、今日は“仕事の話なども含めて”だったはず。
けれども最初の乾杯が終わってからすぐに、私は今日の食事はまったく想像していた目的と違うことに気がついた。
「果林ちゃんは、普段どういう所で食事をしているの?というか、お家どこだったっけ。お店の場所とか決める時に、先に聞けば良かったよね、ごめん」
「いえいえ、とんでもないです。私は今、三宿の方に住んでいます」
「そうなんだ。ひとり暮らし?」
教える義務はないけれど、聞かれた以上、ちゃんと答える。
「はい。そうです。このお店は、よく来られるんですか?」
「うん、たまに。本当はもう1軒、果林ちゃんを連れて行きたい店があって。西麻布にある鮨屋さんなんだけど。今度一緒に行こうよ」
― あぁ、そうだよね。
この時点で、私はもうすべてを悟った。“仕事の話”なんてただの嘘。私を釣るための常套句でしかなく、本当は下心満載のデートが目的だった。
そんなことを考えていると、いつの間にかグラスが空になっていた。
「好きな物、頼んでね」
「孝雄さんは、何にされますか?」
「どうしよう…この後、何にする?もし飲めるなら、ワインのボトルとかでもいいけど」
「いいんですか?」
「もちろん。じゃあ適当に選んじゃうね」
ワインボトルが二人の間に置かれるものの、私はこの食事が一刻も早く終わることを望んでいた。
なぜなら、先ほどからどんどん孝雄の距離が近くなってきているから。
「美香とは、結構長い付き合いなの?」
「いえ、そんなことないですよ。孝雄さんは、どこで知り合ったんですか?」
「僕は友達の友達で…ちなみに果林ちゃん、今お付き合いしている人とかいるの?」
「今はいないですよ〜」
「そうなんだ。ちなみに、僕はオンオフしっかり分けられる人だから。果林ちゃんとはプライベートな方で、もっと仲良くなりたいなと思ってるよ」
― この人は、何を言っているんだろうか。
心底、そう思った。
もしただのデートなら、最初から仕事をぶら下げて釣るのをやめてほしい。それにそういう理由ならば、私は今日ここに来なかった。
しかしそんなことを考えていたせいか、うっかりテーブルの上にあったグラスを倒してしまった。
「ごめんなさい!おケガないですか?本当にごめんなさい」
「こちらは大丈夫だし、まったく問題ないよ。むしろ果林ちゃんは大丈夫?洋服とか、濡れてない?」
「私は大丈夫です。すみません…」
「本当に気にしないで」
その時だった。
孝雄が、まさかの私の頭を“ポンポン”と撫でてきたのだ。
― え…無理!!!心底、無理!気持ち悪い!
そう叫びたくなった。でもここは高級店だし、そんなことを叫ぶわけにはいかない。だから私は笑顔で、孝雄の手をさっと払う。
正直、ここからの会話はほぼ聞いていない。1秒でも早く終わることをひたすら祈り、他のことを考えるようにしていたから。
そして、本当はお会計も自分で払おうと思っていた。なぜなら、ここで貸しを作りたくなかったから。
しかしお手洗いに行った隙にさっと会計を済ませてくれていた孝雄。
「ご馳走さまでした。すみません、ご馳走になってしまい。お支払いしようと思っていたのですが」
お店の外へ出て、とりあえずお礼だけちゃんと言って、早く帰ろうとした、その瞬間…。
「そんなのいいよ。本当に楽しかったね。まだ帰したくないから…この前行ったバーへ行かない?」
そう言いながら、次は私の手を握ってきた孝雄。
― む、む、無理すぎる…。
これはセクハラにならないのだろうか。心底気持ち悪く、今度は本当に強く手を振り払った。
「すみません、明日朝早いので今日は帰りますね」
「残念…。じゃあタクシーで送ろうか?」
孝雄と一緒にタクシーになんて、絶対に乗りたくない。
「いえ、このまま今日は電車で帰るので大丈夫です」
「気をつけて帰ってね。またすぐに」
「はい、ご馳走様でした」
14歳も年下なのに、どうして“いける”と思ったのだろうか。むしろ“いける”と思わせてしまった自分も悔しい。
世の中には、素敵な年上の男性もたくさんいる。そういう方々は紳士的で優しくて、グイグイ来ない。
でもたまに、孝雄のような“オジアタック”な人もいる。
「本当に、気をつけよう」
そう心に誓いながら、私は帰宅後。いつもの倍くらいの時間をかけて手洗いうがいを行った。
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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
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春の訪れ、恋の始まり

