
野原や空き地、道端でけなげに育つ野草たち。普段それらの名前を意識することはあまりないかもしれませんが、「雑草という草はない」という植物学者・牧野富太郎の言葉がよく知られているように、どんな草花にもそれぞれ名前があります。そして、野草の花も、よく見ると意外とかわいらしいものですよ。今回は、雑草として扱われる身近な花をクローズアップでご紹介。どこかで目にしたこの植物の名前は分かりますか?
特徴的な姿を持つ身近な花
紫ピンクの花が愛らしい冒頭写真の野草。北海道を除く日本全国に分布し、畑や道端、野原などで一般に見かける身近な花です。花の大きさは2cmほど。細い筒状の花は、先端が唇のように上下に分かれた唇形花。まるで小さなヘビがパカッと大きく口を開けているようにも見えますね。下唇には濃色の斑点もあります。
花だけでなく、もう少し離れて株全体の様子を見てみましょう。

この姿にピンと来た方も多いのでは?
草丈は10~30cmほど。葉は浅く切れ込みが入った扇形で、茎を包むように対生し、数段重なります。花は葉の付け根付近から飛び出すようにつきます。よく観察すると、茎は四角形で稜(りょう)があります。

春に群生して咲くと、野原一面がまるで薄紅紫のカーペットに覆われたかのような風景に。
さて、この野草はなんでしょう?
正解は…
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ホトケノザ

ホトケノザの基本データ
学名:Lamium amplexicaule
科名:シソ科
属名:オドリコソウ属
原産地:日本、アジア、ヨーロッパ、北アフリカなどのユーラシア大陸、アフリカ大陸
和名:ホトケノザ(仏の座)
別名:サンガイグサ(三階草)
英名:henbit、henbit deadnettleなど
形態:一年草または越年草
草丈:10~30cm
ホトケノザはユーラシア大陸、北アフリカ大陸原産で、世界中に広く分布しています。道端や野原などでごく普通に見かける野草で、秋に発芽して冬を越し、翌春開花するものが多いため、開花のピークは3~5月。ただし、環境に合えば季節を問わず生育し、早ければ12月頃から開花します。花は通常紅紫色に斑点が入りますが、薄いピンクや白花のもの、斑点がないものなど個体差も見られます。

ホトケノザという名前は、半円形の葉が対生し、茎の周りを取り囲むように円形につくことを仏像の台座に見立てたことから。葉が段々になってつくことから、サンガイグサ(三階草)という別名もあります。花には甘い蜜があり、花を抜き取って付け根から蜜を吸って楽しんだことがある人も多いかもしれません。ただし、道端の花は排気ガスや農薬、動物の排泄物などにより汚染されていることもあるので注意しましょう。

ホトケノザは、開花する通常の花のほか、つぼみのままで結実する閉鎖花もあるのが特徴。種子にはアリが好むエライオソームという物質が付着し、これによってアリにより遠くまで運ばれることも知られています。

春の七草の「ホトケノザ」との違い

春の七草の1つにも「ホトケノザ」がありますね。じつはこちらの「ホトケノザ」は、今回ご紹介したホトケノザとは別種。コオニタビラコ(小鬼田平子)というキク科の植物の別名です。タンポポのように大きく切れ込みの入った葉は丸みがあり、春に花茎を伸ばして直径1cm弱の小さな黄色い花を咲かせます。コオニタビラコは若葉を食用にできますが、一方のシソ科のホトケノザは美味しくなく食用できないので注意しましょう。
ホトケノザとヒメオドリコソウの違い

ホトケノザとよく似た春の野草に、ヒメオドリコソウがあります。
ヒメオドリコソウはヨーロッパ原産の越年草で、日本にも帰化してどこにでも見られる一般的な雑草です。ホトケノザと同じくシソ科オドリコソウ属の植物で、同じような環境を好むのか、隣り合うようにして咲いている姿もよく見かけます。

ホトケノザとヒメオドリコソウは、花の形はよく似ていますが、ポイントを押さえておけば簡単に見分けることができます。見分けやすいポイントは、葉の色形と花のつき方です。
ホトケノザの葉は茎の周りを取り囲む円形の台のようにつくのに対し、ヒメオドリコソウはスペード形の葉が密につき、上部の葉が赤紫色に色づくことが多いのが特徴です。また、ホトケノザは葉の上に花が突き出るよう上向きについてよく目立つのに対し、ヒメオドリコソウの花は葉の隙間から顔をのぞかせるように横向きに咲きます。
一見似ている2つの野草ですが、意外と見分けは簡単。春の道端で見かけたら、ぜひどちらなのか見分けにトライしてみてくださいね。
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