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時給50円で月300時間労働…「お父さんが何人もいた」“虐待と搾取の家庭”で育った47歳女性が、歌舞伎町でショートケーキ店を開くまで

時給50円で月300時間労働…「お父さんが何人もいた」“虐待と搾取の家庭”で育った47歳女性が、歌舞伎町でショートケーキ店を開くまで

◆「男性に対する怒り」も

――ところで、お母様には成人後も悩まされたとか。

岳野めぐみ:結婚の少し前、早朝に警察が来て、「大阪府のこの物件に差し押さえ令状が出ている」というんです。よく調べてみると、母が私の印鑑を無断で使用して親子ローンを組んでいた物件であることがわかりました。急いで大阪に帰って問いただしても、「あんたも帰る家が必要やろ」などと開き直るばかりで、話し合いになりませんでした。

 その前から、クレジットカードを作ろうとして断られることがあり、「なんでだろう?」とは思っていたんです。自分名義での滞納があるため、私は銀行から借りて起業することが難しくなったと思いました。それで当時の彼と結婚した、という打算も少しあります。

――岳野さんの根底にはお母様に対する負の感情はもちろん、男性に対する怒りもありますか。

岳野めぐみ:昔から、おじさんと相性がよくないんですよね。セクハラ、パワハラを受けやすいかもしれません。ホストクラブの広報として事務職をしたこともありましたが、あまりにおじさんたちが旧態依然としていて、「自分で事業をやろう」と舵を切った経緯があります。

――具体的に旧態依然と感じた点を教えてください。

岳野めぐみ:私が経験したことでいうと、「岳野さんは1回もお茶を汲んでくれない」「朝、(全体に挨拶を言うのみで)俺のところに個別に挨拶に来ないのはおかしい」みたいな、業務効率と無縁の小言でしょうか。それから広報のために接待にお土産を持っていったりしていると「遊びに行って給料もらっていいね」とか。

――岳野さんが感じる“おじさんのよくないところ”はどんなところでしょう。

岳野めぐみ:「◯◯ちゃん」呼びに代表されるように、基本的に女性を格下にみてリスペクトがないところでしょうか。それから、上から目線のアドバイスをするわりに、実際に頼ろうとすると意外とあてにならない点も落胆させられますね。自分の経験則だけが唯一の指針で、新しいものを受け入れられない点も改善すべきだなと思います。私がおじさんと相性がよくないのは、おそらく、幼少期から実家に出入りしていたおじさんたちに辟易していたことが根底にあると思います。

◆児童養護施設に出向くワケ

ShortCakeCompany
「子どもが喜ぶ姿」はやりがいのひとつでもある
――話題は変わりますが、岳野さんは児童養護施設などにボランティアでケーキ作りを教えに行ったりしていますよね。

岳野めぐみ:私は児童養護施設に入ることはありませんでしたが、もしも当時入れるものなら入りたかったなと感じる程度には、家庭環境に問題があったと思います。実際にボランティアに行って感じることですが、入所している子たちに将来のことを聞いても、「◯◯がやりたい」という希望はほとんど耳にしません。それよりは「寮のあるところがいい」などの実際の生活に即した答えが多い印象です。人生に安易に希望を持てない気持ちは、僭越ながら私も理解できるつもりです。だからこそ、応援したいと思っているんです。

――ボランティア団体ではなく、個人でボランティア活動をするのはどうしてでしょう。

岳野めぐみ:定年した高齢者が善意でボランティアをすることは悪いことではないと思うのですが、一方で、そうした年代の人に傷つけられてきた少年少女も少なくないと私は想像します。「いいことをしている」という自負で満足してしまって、本当に当事者たちが困っていることに寄り添えているかと考えた時に、私は個人でできることをやろうと思いました。

――ケーキを目の前にすると、子どもの表情も変わりますか。

岳野めぐみ:そうですね、ケーキはおめでたいことやご褒美の場面で登場するものですから、自然に笑顔が増えますよね。そういう点で、ケーキ屋を選んで良かったなと感じます。

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 ShortCakeCompanyでは現在、10名ほどのスタッフが稼働している。採用基準は「本気で変わろうとしているか否か」。岳野さんは「なるべく多くの人に変わるチャンスを、とは思う」と目を細める。もがいた経験があるから、人の痛みに自らの面影を重ねられる。濃密でありながら後を引かない同店のショートケーキの甘みが、かつて岳野さんが探しあてた愛情にも似ている。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
配信元: 日刊SPA!

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