◆自分の睡眠を知ることと、地道な生活改善が大事
記事の最初で触れたように、日本人の平均睡眠時間は先進国内でも最低の水準であり、自己責任のレベルを越え、社会問題として捉えるべき面が大きい。長時間労働、通勤時間の長さ、夜遅い社会活動、「寝ていないのが頑張り、寝るのは怠惰」のような同調圧力が、個人努力だけでは改善しにくい睡眠不足の土壌となっていることも考えられる。「この影響は、実は経済面でも小さくありません。RAND Europe(欧州の非営利・非党派の政策研究機関)が2016年に公表した試算によると、日本の睡眠不足による経済損失はGDP比2.92%。試算当時の為替水準では約20兆円規模にも相当します。睡眠は贅沢ではなく、健康と生産性を支えるインフラだと考えるべきです」
ただ、現状を改善する動きも進行中だ。大きな流れは「睡眠の可視化」「CBT-I(※不眠症に対する認知行動療法)の普及」の2つあると、飯島院長は説明する。
「1つ目の睡眠可視化については先に述べたとおり、スマートウォッチやアプリによって睡眠傾向を自主把握しやすくなりました。もちろん病院でのポリソムノグラフィー(※身体にセンサーを付けて就寝することで睡眠障害を確認する精密検査)ほどの精度はありませんが、『寝不足続き』『中途覚醒が多い』などの傾向を見つけるきっかけとして有用です」
2つ目のCBT-Iとは、思考や信念など「心理的要因」と生活習慣などの「行動要因」に向き合い、ケアをすることで薬を用いずに不眠を改善する方法だ。特に慢性不眠症に対しては海外の医学会で第一選択として位置づけられており、対面療法のほかデジタル・オンラインの支援も広がっているという。
「厚生労働省の医道審議会が2026年3月6日付で提出した意見書では、『睡眠障害』を既存の診療科名と組み合わせて標榜可能な用語に追加することが適当とされました。今後は日本の制度面でも、より進んだ睡眠医療の普及が期待されます」
「睡眠は、血糖、ホルモン、免疫、メンタルを支える土台です。眠れないことは恥ずかしいことではありません。困ったときは、早めに専門家へ相談してください」
最後に、飯島院長は「睡眠の問題を『自己責任』だけで片づけないでほしい」と語っていた。不眠の原因は自分の管理不行届だと思ってしまう人は多いが、上記のとおり睡眠には社会背景も深く関わっている。自分を責めたり追い込んだりせず、就寝時間やスマホの扱いなど、地道な改善の積み重ねをしていこう。
<取材・文/デヤブロウ>
【デヤブロウ】
東京都在住。2024年にフリーランスとして独立し、ライター業およびイラスト業で活動中。ライターとしては「Yahoo!ニュース」「macaroni」「All Aboutニュース」などの媒体で、東京都内の飲食店・美術館・博物館・イベント・ほか見所の紹介記事を執筆。プライベートでも都内歩きが趣味で、とりわけ週2〜3回の銭湯&サウナ通いが心のオアシス。好きなエリアは浅草〜上野近辺、池袋周辺、中野〜高円寺辺りなど。X(旧Twitter):@Dejavu_Raw

