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映画館から、神保町に通う。サブスクシネマ「シネマリス」

映画館から、神保町に通う。サブスクシネマ「シネマリス」

神保町に新たなミニシアターが誕生した、その必然

神保町駅から歩くこと数分。お茶の水へと抜ける、駿河台のふもとの路地へ。まるで秘密基地の入り口のように、「シネマリス」はそこにある。

螺旋階段をぐるりと降りて地下へ向かう。一歩、また一歩、「映画の世界」へと誘われるような気持ちになる。

「シネマリス」は2025年12月に誕生。開業を目指して実施されたクラウドファンディングでは、目標金額の3倍近くを達成したという。各地でミニシアターの閉館が相次ぐなか、こうした場所を待ち望む声の大きさがうかがえる。

文化の街・神保町は、ミニシアターと縁の深い地である。この街に新たな劇場が誕生したことは、どこか運命的だ。支配人・稲田良子さんに話を聞いた。

「もともとは、神保町ありきで開業したわけではないんです。ですが、神保町はミニシアターの元祖『岩波ホール』が存在した地。学生街の一面もあり、古くから文化と自由を謳ってきたエリアでもある。この地に導かれたのは、もう“必然”だったのではないかと思います。かつて駿河台にあった『文化学院』では、『小さくても善いものを』という理念が掲げられていたそうです。まさに、私たちが目指すものにぴったりの言葉で、当館でもその理念をお借りしています」

街の佇まいそのものも、「シネマリス」のあり方と深く響き合っている。通りに連なるのは、古きよき小規模店たち。外から訪れる人もいれば、地元の人もいる。昼間のにぎわいと、夜の静けさのギャップ。そんな多層性を持つ街だからこそ、“小さな映画館”も自然に根付くのではないか。稲田さん自身も、そう実感しているそうだ。

「映画を観たあと喫茶店に寄ったり、本屋を覗いたり……。街と映画館をひと続きの体験として楽しんでいただけたら。たとえばインド映画を観たあとにカレーを食べる、そんな一日も素敵ですね」

サブスク制がもたらす、偶然の出逢い

さて、「シネマリス」の大きな特徴のひとつが「サブスク会員制度」だ。

2週間ごとにラインナップされる2作品が見放題になる仕組みで、すべて追えば年間約50本の映画を観られる計算だ。会費は月額2,500円、または年額22,000円。一日に2作品を“はしご”する会員も多く、まさに通いたくなるミニシアターなのである。

「かつては一般的だった“二本立て上映”をイメージしています。片方の作品を目当てに来た人が、せっかくだからもう一本も観る。意外にもそちらの作品のほうが面白くて、ハマってしまう──そんな体験を提供できたらと、サブスク制を導入しました。作品との偶然の出逢いが、観る人に多様な価値観をもたらすと考えています」

より多くの人に鑑賞の機会があるように、午前中から夜まで幅広い上映回を用意している。仕事帰りに訪れたとしても、2作品観られるような編成を心がけているそうだ。

さらに稲田さんは続ける。

「たまたま居合わせた他人と、同じ空間で映画を観る──それが映画館の面白さです。同じシーンで涙を流す人がいるかもしれないし、なぜか笑っている人もいるかもしれません。ひとつの作品を観て、それぞれが違う感想を抱く。そんな体験を大事にしてほしいです」

エンタメも、アルゴリズムに左右される現代。知らず知らずのうちに、自分の「見たいもの」ばかりの閉じた世界に陥りがちだ。だからこそ、予想外の感動や新しい発見が、視野の広がりを生む。映画が本来持つはずのその力を、「シネマリス」は信じている。

それゆえに、作品のキュレーションにも真摯に向き合う。

「キュレーターの好みだけで作品を選ぶと、むしろ観る人の価値観を狭めかねません。スタッフ同士で相談しながら、多様性と観やすさのバランスを模索しています。あまりに尖ったセレクトではかえって閉じた空間になってしまいますから、柔軟に幅広いキュレーションが大切ですね」

一方で、選者の温度を感じるセレクトもまた、魅力のひとつ。レスリー・チャンや浅野忠信など、俳優にフォーカスした特集もおもしろい。映画好きのツボをついたキュレーションは、スタッフたちの“映画愛”があってこそだろう。

配信元: Harumari TOKYO

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