地方遠征まで考えるほど推しに夢中になる56歳カナコさん。推しから認められる喜びを味わう一方で、ファンの嫉妬や噂に傷つく経験も。コロナ禍と更年期のつらさの中で出会った声優にハマり…50代リアルな推し活体験・後編です。
「完全に沼」朝起きるとグッズに挨拶する毎日
前編の話はこちらから。
推しの声優のライブに行ってからは、今の言葉でいえば完全に沼でした。底なし沼です。
朝起きると彼のグッズに挨拶して、パートでもそれまで以上に張り切って働きました。次のライブにはいつ行こう、遠いけれど地方まで遠征してみようか。そんなことばかり考えていたんです。
Mさんにプレゼントを渡している人もいました。M友さんに聞くと、高価なものは受け取ってもらえない決まりがあるらしい。でも、何か渡したい。そう考えた末に、自分で描いた絵を贈ろうと思いました。
絵が得意というほどではないんです。でも、もともと少しデザインを学んでいたので、描くことは嫌いではありませんでした。本当は画家になりたかったんです。けれど、「画家なんて食べていけるわけがない」「結婚が遅くなる」と親に反対されました。
うちの親は、「女は結婚してこそ幸せになれる」という価値観の人たちでした。だから私は、ずっと自分の本当の気持ちに蓋をして生きてきたんだと思います。推し活をしているうちに、そんな自分の人生まで見えてきたんです。
推しに褒められた一言が、止まっていた自分を動かす
次のライブで、ハガキ大の紙に描いたMさんの肖像画を贈りました。すると彼は、「うわ、すごい。本物よりずっといい男じゃないですか」と、大きな笑顔で言ってくれたんです。
それが本当にうれしかった。M友さんたちにも、「そんな才能があったのね」「うらやましい」と言われて、それもまたうれしかったですね。結婚してから、ほとんど褒められたことのない人生でしたから。
別のときには、「僕、カナコさんの絵、とても好きです」と小声で言ってくれて。飛び上がるほどうれしかったです。
でも、もちろんいいことばかりではありませんでした。

