エンディングに向け、伝えたいことを「願い書」に記す
「願い書」は、法的な拘束力を持つ遺言書ではありません。突然の病気や万一の際に備えて、阿部さんが伝えたいことを手書きしたものです。
例えば、病気の治療については、「75歳を過ぎ、後遺症が大きく残る、あるいは回復不可能と判断された時点で、すべての延命治療を拒否します。認知症、がん、リウマチなどでも、主体的には自然体治療に任せることにします」などの希望が書かれています。
最初に「願い書」を書いた4年後に、阿部さんの母親が熱中症で倒れるという事件が起きました。それがきっかけとなり、葬儀の項目を加えて書き直したと言います。
「葬儀については、『公的後継人に任せますが、私は仏教徒なので、仏教式でお願いします』と記入しました」
また、「墓の所在地は◯◯です。連絡をとり、骨を納骨して下さい」などの情報も書かれています。「最期のことを書いたら、なんだか気持ちがすっきりしました」と阿部さん。その後も、時々見直して、更新することもあるそうです。
とはいえ、いざというときに「願い書」を見つけてもらえなければ、意味がありません。
「権利書や契約書などの重要書類をまとめたファイルに『願い書』を入れ、願い書を書いていることや、置き場所を近親者に伝えました。『願い書』をコピーしたものもバッグの中に入れています」
元気なうちに、プロに死後の手続きを任せる契約を結びます
「『願い書』は、最期の時をきちんと受け入れるために作っています。自分の人生を見つめ直す意味でも、一度記入してみることをおすすめします」と阿部さん。
また、「願い書」を書こうと考えた理由の一つに、どんなに周囲に迷惑を掛けたくないと思っても、「死後の手続きだけは自分ではできない」こともあったそうです。
自分に万一のことがあった場合、死亡届けの提出や葬儀の準備と実施、病院代の支払い、社会保険関連の届出事務など、さまざまな、しかも手間のかかる事務手続き(死後事務)が発生します。
「一人暮らしの私は、『誰に託すか』が大きな問題。一番託したいのは、死後の事務手続き。自分で予約してできるならしますが、無理なので(笑)。最初は親戚筋の子に託そうかと思いましたが、彼女も激務の人生で、私のことまで頼めません」
あれこれ情報を集めて検討した阿部さんが出した結論は、死後の事務手続きを、お金を出してプロに任せること。「元気なうちに生前契約を結ぼうと思っています」と話します。
「結論を出したので、もうこの道をいけばいい! 迷うことなくまっしぐらに進むだけです」
撮影=元木みゆき
※この記事は、雑誌「ハルメク」2020年9月号を再編集しています。

