◆40代で再会した元カレの誘いを“自信を持った状態”で断るため

「その女性は20~30代の頃にお付き合いをしていた男性と、1度別れたけれど、40代で再会したのだそうです。お別れした理由は、相手の男性がモテる方で、常に女性の影がチラついていたことに耐えられなかったと。再会した際に身体を求められたといいます」
しかし、当時その女性は萎縮性腟炎により女性器への挿入が不可能な状態。痛みがあり、とても性交渉ができる状態ではなかった。
「彼に対して『加齢による老化・劣化で性交渉は無理』とは言いたくなかったのだそうで……自分ができないことが理由で相手から愛想をつかされるのは嫌だと感じたんでしょうね。その時は、あえて焦らすような言い方をして『クリスマスまで待って』と数か月お預けにしたそうです」
その後、クリニックを受診して性交渉ができるようになったその女性。早速、待たせていた男性と性交渉を行ったのかと思いきや……?
「性交渉ができる状態になったタイミングで、関係を断ったんだそうです。自分に自信がない状態で終わらせるのではなく、“いつでもできるけど、その上であなたとは付き合わない”という状態で別れることが、その方にとってのプライドだったのでしょう。重要だったんですね。そういう過去との決別のために手術を受ける方もいました」
◆時代が進化、年齢を重ねて初めて”性の悩み”に直面することも
クリニックにはさまざまな悩みを抱えた患者が日々訪れる。女性器の形成をはじめ、再生医療や幹細胞治療まで、医療と美容を横断した高度な治療を提供しているのは珍しい。「私はもともと大学病院の産婦人科にいたこともあり、毎日のように緊急帝王切開などを行っていました。”とにかく命優先”なので、まるで戦場のような現場です。ただ、お産を終えたあと、多くの女性が抱える悩みのケアまではなかなか手が回らず、アフターケアは難しい状況でした。
日本の周産期医療は世界的に見ても非常にレベルが高く、赤ちゃんが無事に生まれるまでのケアは手厚い。一方、お産が終わった後のケアは、どうしてもおざなりにされてしまっていました。女性としては、その後も長く悩みを抱え続けます。産後のダメージは全治8ヶ月くらいの交通事故の後遺症に例えられることがあるくらいです。
保険診療ではカバーできない、そうした女性たちの悩みに応えたい。それが、私が自由診療でこのクリニックを開いた大きな理由です。現時点では自由診療ではありますが、今後は保健適応がされていくと良いなと思っています」
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年齢を重ねれば性や身体の悩みは「仕方がないもの」と片づけられてきた。しかし、世の中の価値観が変化し、パートナーとの出会いも増えた今、高齢になってから直面する悩みも出てきている。
そこで性器の治療や整形を選ぶ人たちの背景には、「性交渉がしたい」という単純な欲求だけではなく、誰かともう一度向き合いたい、関係を築きたいという思いもある。年齢を重ねても人生は最後まで続いていくのだ。
<取材・文/松本果歩、編集/藤井厚年>
【松本果歩】
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA

